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「お腹、空いた……」


 元に戻った大鎌を杖代わりとし、ずるずる座り込み、掠れ気味な声で呟くリゼ。

 顔色悪いな。ハンガーノック起こしてやがる。


 ……改めて端末で調べたところ、さっきの『呪胎告知』とやらは一回につき体重が一キロ減るらしい。

 大の男でも普通にへたばる消耗。コイツは華奢だし、実質的な負荷は数字以上の筈。


「そういうスキルなら食糧は携帯してるだろ。どこだ」

「右脚の圧縮鞄……」


 圧縮鞄。事象革命が齎した技術発展により実現を遂げた、内部空間を押し固め、容量を何倍にも増やす便利アイテム。素材が貴重なため、安いのでも五十万円くらいするんで俺は持ってない。ブルジョワジーめ。

 見た目は缶ジュース数本詰め込めれば御の字なサイズのレッグポーチに手を突っ込むと、二の腕の半ばまで簡単に呑まれた。気持ち悪っ。


「チョコバー、ポテチ、チョコバー、ゼリー飲料、チョコバー、チョコバー……菓子ばっかだなオイ」

「ぎぶみーかろりー」


 取り敢えず吸収の早いゼリー飲料を渡す。

 飲み干した後、チョコバーを三本ほど貪り食うと多少なり栄養が巡ったのか、落ち着いた様子で深く息を吐いた。


「朝昼続けて食べてなかったのが効いたわね」

「食えよ。死ぬぞ」

「寝坊したし、メイク手間取ったし、昼頃は樹海エリアだったし。あそこで飲み食いとかイヤ」


 確かに陰鬱な空気で食欲失せるが。






 リゼが回復するまで暇なため『呪胎告知』の圏内に居た不運な魔物達が残した魔石とドロップ品を回収することに。

 呪いを受け、腐り落ち、枯れ果てた草を掻き分ける。

 希釈して使うタイプの除草剤を原液のまま散布しようと、こうはなるまい。


「十、二十、三十……随分多いな。戦闘の気配に寄って来てたのか?」


 平原エリアの魔物が落とす魔石の価格は平均で八百円前後。となるとドロップ品合わせて四万円くらいか。

 甲府迷宮は二十階層以降がオススメの稼ぎ場だと聞くけれど、この辺も悪くはないな。


「む」


 そんなこんな、粗方回収を終えた頃合。を見付けた。


 拾う。まじまじ観察する。

 端末の画像と同じ外観。こりゃ本物だ、初めて見た。


「――リゼ! 『ギフトボックス』が出たぞ!」





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