15






 十三階層は、同じ平原エリアでも見晴らしが良かった十一階層や十二階層と異なり、全域が背の高い草薮で覆われてる。

 あちこち根が張り出してた樹海エリアとは別の意味で歩き難い。


「あ、ストップ」


 生命力旺盛な鬱陶しい雑草を、禍々しさ全開な大鎌でザクザク刈りながら進むリゼ。

 鎌の使い方としては至極正しいものの、何か釈然としないものを抱えつつ追従していたら、おもむろな制止の声。


「どうした」

「正面、十五メートルくらい先。クリーチャーが隠れてる」


 この見通し最悪な地形で良く分かるな。流石探索者シーカー歴二年半の先輩様。


 ……いや。ここに来るまでの様子を振り返る限り、お世辞にもコイツの索敵能力は高くなかった。

 つまり。


「限定的な環境下で有用な探知系スキルか」

「そ。『ナスカの絵描き』っていうの」


 概ね菓子を口に突っ込んでるため長文で会話したがらないリゼに詳細な説明を求めるのも悪い。端末の検索機能で調べよう。

 さて『ナスカの絵描き』……スキル保持者に頭上数十メートルからの俯瞰視点を与える、か。

 成程。天井の低い迷宮エリアや大木生い茂る樹海エリアじゃ役に立たん道理。


「洒落た名前だな」

「名付けは私」

「へぇ」


 言われてみりゃ史学科らしいネーミング。


 ちなみに俺も最近知ったのだが、スキル名とは悉く後付けだ。

 何せスキルペーパーには『鋭い爪を伸ばせる』とか『蹴りに風圧が伴う』など、効果しか表記されない。

 そのため新種のスキルは習得者が命名権を持つ。


「『スプレーパイソン』ね。気付かれたことに気付いたっぽい。こっち来るわ」


 パイソン。蛇型のクリーチャーか。初見だな。

 前に出ようと身構えたら、制された。


「私がやる」

「……そうか?」


 意外。ギチギチパツパツの服は動き辛そうだし、何より大鎌なんて非実用的な武器持ってる時点で遠距離系のスキル構成だとばかり。

 メジャーなところで飛ぶ斬撃とか。うわ超見たい。


「私のスロットは六つ。習得スキルは今のとこ四つ」


 ほう珍しい。スロット持ちの九割は四つか五つと聞くのに。

 ……つまり希少性だけなら、二枠の俺も負けてないワケか。


「派手な演出は好き?」

「やぶさかじゃねぇ」


 そう答えると、リゼは赤い眼を細めた。


「下がってて」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る