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「はあぁぁ。善哉善哉、中々楽しかった」


 などと戦闘後に呟いたら、バイオレンス嗜好と誤解されるか。

 俺は暴力じゃなくスリルが好きなのだ。


 ……しかし、パワーとタフネスはあっても突進一辺倒。小回りも利かない。トドメに、あからさま過ぎる弱点。

 対衝撃系の装備を整えるか、多少考えて戦闘系スキルを扱えれば、あとは幾らかの運動神経と、あの巨体に突っ込まれることへの慣れ次第で容易に倒せる相手。


 三度目は、もういいわ。たぶん何遍やっても今回と同じ方法で勝てるし。

 フロアボスである以上、下層を目指す際は嫌でも戦わなけりゃならんのだろうけど。

 リポップタイム五分だっけ。働き者極まれり。待遇改善のひとつも要求しろよ、社畜精神旺盛なワーカーホリックめ。


「なぁ、どうよ先輩様。スキルの使い方とか立ち回り方とかアドバイスくれていいんだぜ?」

「……討伐所要時間二十五秒。取り敢えず、アタック二回目のビギナーがするような戦いではなかったわね」


 可愛げゼロ、と苦い顔で吐き捨てるリゼ。

 なんて言い草だ。


「正直、アンタと私じゃスタイルが違い過ぎて、参考になるような助言は出来ないんだけど」

「さいで。ま、お前が俺みたく戦う姿は確かにイメージし難いな」


 そんな細腕で攻撃受け止めたりとかしたら驚くよ俺。

 手持ちのスキル次第じゃ不可能とは言い切れないが。スロット持ちの面白いところだ。


「てかデビュー五日でフロアボスって。到達時間どのくらいよ、まさか世界記録?」

「残念、俺の十階層単独攻略達成は六十四時間三十七分。世界記録はドイツの四十八時間十二分。国内だと五十時間ちょいが最速だったか。道中フラフラ遊んでなきゃ、もしかしたかも分からんが」


 クリーチャー討伐数やダンジョン滞在時間などは、協会登録の際に注射された体内ナノマシンが計測し、腕輪型端末を通じてサーバーへと送られる。

 やろうと思えば視覚聴覚とリンクした動画データを吸い出したりも出来るとか。中にはダンジョンアタック時のハイライトをネットに上げて稼ぐSチューバーなんてのも居ると聞いた。


「どっちみち、チマついた記録になんぞ興味ねぇ。行こうぜ。ダラダラしてた所為で復活されんのも馬鹿らしい」

「そうね」


 フロアボス討伐によって進行を妨げるものが失くなった、十一階層へと続く階段。

 ここ以降、樹海エリアから平原エリアに移るワケだが。


「折角のオタノシミ、先輩様のスキルを見せて頂ける機会だ。初志貫徹、キッチリ十三階層までエスコートさせて頂きますよ」

「普通、十番台階層進出ってデビュー半年くらいが目安なのよね」


 早い分には良いだろ、別に。




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