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「妙技トリプルアクセル回し蹴り」


 二十匹目。

 上手くコイツ等の首をヘシ折るコツを掴んだため、今やミルクに浸したクッキー並みの歯応え。


 やっぱゴブリン虐めは楽しくないな。

 大昔に出回ってたラノベとかだと、雑魚を延々殺して経験値稼ぐタイプの主人公が一定数居たが、俺なら退屈で発狂する。

 つか自分より弱い奴を作業的に仕留め続けることが何の経験に繋がるんだ。意味不明。


「アレね。ゴブリンを相手にするだけ時間の無駄」

「弛まぬジム通いと食事管理の賜物だ」

「そう言えば栄養学部……その余裕で人間殺せるレベルの体捌きはどこで習ったワケ?」

「概ね自前の運動神経。あとは暇潰しに格闘技とかの立体動画を見漁って覚えた」

「おっかない時代だわ」


 世界各国の名だたる武術が、自宅で手軽に覚えたい放題。

 なんなら知識や動きの精髄を直接脳内に注入するという新技術も、一部の国では実用化が始まってるとか。


 日進月歩。一昔前は夢物語に過ぎなかった空想が、ふと気付けば現実となっている。

 事象革命以前はVRどころか立体映像さえ子供の工作レベルだったらしいし、最近テレビで騒がれてる月の緑地化もダンジョン由来の資材ありきで推し進められてるプランだ。

 ダンジョンが人類に齎した発展は、広く、深く、多岐に亘って計り知れない。


 まあ、そんな小難しい話は置いといて。


「もっと奥、攻めようぜ。ここじゃつまんねぇし、先輩様のスキルも見せて欲しいしな」


 そう提案すると、何やら思案顔。


「なんだ企業秘密か? 無理強いはしないぞ」

「別に見せるのは構わないけど」


 スキルか装備の恩恵か、或いは外見より軽いのか、ずっと肩に担いでた馬鹿でかい鎌を軽々振り上げ、横薙ぎに払うリゼ。

 鋭利な切っ先が壁に突き当たり、耳障りな高音を撒き散らす。


「この通り。もっと広い場所に出なきゃ映えないわよ、私のスキル」

「そいつは不味い。見栄えは重要だ」


 広い場所となると、六階層以降の樹海エリアか。

 いや、あそこもあそこで木が邪魔になる。足場も悪い。


 そうだな。いっそ。


「前に俺が降りたとこまで潜ってみるか」

「はあ? アンタ、今日でアタック二回目なんでしょ? どこまで降りたってのよ」


 ビギナーはダンジョンに慣れるまで――大雑把な目安はトータル滞在時間が五十時間から百時間に届くまで、五階層以内に留まることが推奨されている。

 何故なら難易度を問わず、殆どのダンジョンは五階層まで凡そ同じ構造だからだ。


 前回、五日間ぶっ続けでアタックかけてた俺は、ギリ百時間前後。

 で、到達最深階層はと言えば。


「十三階層」

「…………はあぁ?」





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