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 レバーとほうれん草、美味い。

 鉄分って大事。


「しっかし、月ちゃんも思い切ったことしたねぇ」


 ダンジョンが面白過ぎて五日くらい篭っていたところ、遭難者扱いで探しに来たベテラン連中に引っ張り出された。

 一度ダンジョンを出たら最低四十八時間のインターバルを挟まねば再入場が出来ない決まりなので、取り敢えず大学に来たところ、旧友の吉田キチダが事情を尋ねてきたため包み隠さず話した次第。


 尚、旧友と言ってもファーストコンタクト交わしたの半年前だが。

 使ってみたかっただけ。旧友。


「俺なら一億当たったらクルマとか買っちゃうねぇ。いーい感じのガイシャ」

「高級車は維持費で死ねるぞ。後先考えろ」

「あひゃひゃひゃひゃっ! せーこーりつ四割切ってる博打に億出したヒトがなんか言ってらぁー!」


 失敬な。俺もちゃんと考えたさ、三秒くらい。

 考えた上で、人生を変えるための金として注ぎ込んだんだ。


 そも宝くじの当選金なぞ、所詮あぶく銭。取引相手の少年みたく、金次第で親しい者の命が左右される状況でもなかった。

 なら、どう使おうと俺の勝手だ。文句がある奴はかかって来い、心配するな『双血』は使わないでおいてやる。ダンジョン外での戦闘系スキル行使は基本的に犯罪だし、縦しんば傷害事件でも起こそうものならグンと罪が重くなる。


 ちなみにスロット持ちが実刑判決食らったら、ダンジョンで延々魔石採りやらされるって噂。

 んなもん冒険と呼べん。御免被る。






 御馳走様でした。

 五日ぶりの人間らしい食事、五臓六腑に染み渡る。

 ダンジョン内だとロクなもんが食えなかったし。今度から食料持ち込もう。

 改めて振り返ると、いくらなんでも手ぶらはナメ過ぎ。せめてサプリくらいポケットに放り込んどくべきだった。


「なーなー月ちゃん。なー、知っとる?」

「知らん」


 質問なら主語を入れろチャラ男め。


「いやな? ウチの学校、そう言えば一人居たなーって」

「何がだよ」


 要領を得ない奴だな。

 だから頻繁にレポートの再提出食らうんだろが。


「そらモチ探索者シーカー探索者シーカー。史学科のコだったかな確か」

「ほう」


 この大学に探索者シーカーが在籍していたとは初耳だ。

 しかし当然と言えば当然か。史学科となると文学部の学生。俺との接点ゼロ。吉田みたく顔の広い奴でもなきゃ情報自体入ってこない。


「で?」

「んー。月ちゃん今日午前だけじゃん?」


 おう。


「今日明日ダンジョン行けないんじゃん?」


 おう。


「そんじゃま時間あるじゃん?」


 ……おう。


「つまり暇じゃん?」


 長い。話がまだるっこしい。

 要約って概念、御存知か。


「そのロスタイム使ってパイセンから色々オハナシ聞けば、有意義に過ごせんじゃないっかなーと」


 悪くない提案だ。チャラ男もたまには良いことを言う。

 そうと決まれば善は急げ。早速、噂の先輩とやらの顔を拝みに向かうとしよう。


「お、行くん? 会いに行くん?」

「ああ。お前も来るか?」

「俺ちゃん無理ちゃん。明日までにレポート書き直せって」


 またかよ。今期何度目だ。

 チャランポランも大概にしとかねぇと、そのうちマジで留年食らうぞ。


「じゃあな」

「おばいちゃー。儲かったらクルマ奢ってちょー」


 図々しいにも限度があるだろ。





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