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赤ん坊くらいなら丸ごと飲み込めそうな大口を開けた、正面の一頭を躱す。
足場の悪さも手伝い、僅かに体勢が崩れたところを、今度は二頭同時で仕掛けられる。
どうしたもんか。コレを避けるだけなら後ろに跳べば済む話だが、そうすると包囲網が狭まってしまう。
上手くデザインされた流れ。畜生の分際で中々に頭良いな、コイツら。
――よし。これなら慣らしの相手には悪くない。
使うか。スキル。
「
内側から青い光を帯びる静脈。
それを見とめた直後、俺の右腕に大狼が乱杭歯を突き立て――ガギンと、金属質な高音を響かせた。
重ねて現代社会は魔石を筆頭、ダンジョンから齎される資源の恩恵に依存して成り立ってる。
必然、数少ない
なので探索者支援協会に登録したスロット持ちは、最低限の戦闘能力を得るため、スキルをひとつ貰える。
習得方法は簡単だ。あらゆるクリーチャーが稀にドロップ品として落とす紙切れ、通称スキルペーパーを使うだけ。
スロットの枠数は人によって違う。最大八つだが、大抵は四つか五つだ。
ちなみに俺は二つ。ワケありってのは、つまりそういうこと。
得られるチカラが多いに越した話は無い。厳しい
よってスロット三つ以下は、中々買い手が付かんとか。
そもそもスロットを売りたがる奴自体、かなり少数派だが。
……豆知識はさて置き。俺が得たスキルの名は『
己の血管、動脈を媒体に発動させることで身体能力を強化する『
ひとつで複数の能力を持つスキルは、だいぶレアだとか。俺が使わせて貰ったスキルペーパーはランダム型だったので、相当に運が良かったと言える。
スロット少ないんだし、色々出来た方が得だよな。
尚、三つほど欠点もあるが、取り敢えず割愛。
「豪血」
想像もしなかったろう硬さに大狼が怯んだ隙、引き剥がして筋力を上げる。
打ち下ろすように殴り伏せると、奴さんの頭は卵の殻も同然に潰れた。
仲間が死んだことで崩れた陣形。
なまじ頭が働くだけに、大狼達は立て直すための判断を一瞬迷う。
僅か数秒の隙。
しかし強化された肉体なら、数秒あれば十分過ぎるほど事足りた。
「ひーふーみー、と」
スキルの反動でクラクラする頭を押さえつつ、消えた死体の側に転がる魔石を回収。
ゴブリンより明らかにデカい。魔石の大きさはクリーチャーの戦闘能力に比例する。
協会登録の際に貰った、死にそうになると同じ階層に居る
潜った時間と比較すれば、時給高めのバイトと変わらん額。
でも、まあ。
「クソつまんねぇバイトよか、億倍楽しいわな」
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