3
イラつく。よりにもよって手術前日にトラブルが起きた。
どこで知ったのか、俺の一億当選を聞き付けた両親が乗り込んで来やがった。
およそ三年ぶりに顔を合わせて早々の台詞が「バカなことはやめろ」「折角の大金をドブに捨てる気か」。
他にも家のリフォームに使えとか、親孝行する気は無いのかとか、借金の利息がとか。後半は殆ど聞き流してたもんで覚えてない。
……バカはどっちだ、下らねぇ。
少なくとも俺に、無味乾燥とした毎日を何十年も繰り返すだけのコピペを有難がる趣味は無い。
どいつもこいつも脳みそが腐っちまってる。
望みを遂げて早死にするのと、退屈に百歳まで生きるのとで、後者が幸せだと疑わない病人ばかりだ。
人生なんざ、楽しんでナンボだろうが。
俺は
そうまで焦がれた生き方を、今のままじゃ百パーセント不可能な道を、四割もの確率で手に入れられるなら、一億なんぞ取るに足らん端金だ。
結局、両親は勘当だなんだ散々と喚き散らし、出て行った。
場に居合わせたスロット売却希望者の少年は気まずそうにしていたが、あんな奴等の戯言、耳に入れる必要は無い。胸を張っていればいい。
そもそも、こちとら、あいつらには、とっくの昔に愛想を尽かしてた。
口を開けば零から百まで不平不満。一丁前にプライドばかり高く、不成功の理由を全て他所に押し付け、何があろうと己の無能を認めない。
そんな、人間の汚点だけを押し固めた、殴る価値すら見出せん人種だ。
大人しく引き上げた理由だって、俺相手に力尽くを図ったところで天地が引っ繰り返ろうと勝てないからに過ぎん筈だし。
……考えれば考えるほど、向こうから縁を切ってくれて寧ろ清々した。
捉え方によっては、輝ける新章に相応しき幕間だ。
ああ。そう受け取ったならば心機一転、素晴らしく晴れやかな気分。
二度と会うことは無いだろうけれど、最後の最後に息子孝行ありがとう。
生まれて初めて、あの二人に感謝の念など抱いてしまった。誠に遺憾。
そして翌日。この厄祓いが背を押す形で、手術は無事、成功した。
懸念された術後の魂魄拒絶反応も無く、俺は晴れてスロット持ちとなり、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます