「名前」

セピアの褪せた写真

手に抱かれた私

顔を見れない母親

声を知らない父親


腕の痣は夜が来る度

奥底の記憶を目覚めさせる

苦しい呼吸の中で

確かな絆を感じていた


いつも優しくて

ずっと微笑んで

たまに泣き虫なわたしを

あなたは包んでくれた

奇跡は起きないけど

せめてもう一度あなたの胸に

抱かれて眠りたかった

そして朝が来る


いつも怒っていて

ずっと泣いていて

たまに笑ってくれる

あなただけど大好きだった

願いは叶わないけど

それでも もう一度だけ

あなたの温もりに包まれたかった

そして朝が来る


セピアの褪せた写真

手帳に大事に入れて

消せない記憶と名前を

抱えて歩こう 一番近い未来を


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る