「Tomorrow」

黒いインクで出来た空気が好きで

私はいつもこの机に座る

ローファーで歩くと単調な音が響く

迷惑にならない程度で足を弾ませる


この町はとても小さくて

なんでも手に届きそうなんだ

風を切るペダルは重いけど

いつか来る明日に胸は躍るんだ



君のいってらっしゃいに背中を押され

私はドアを開けて外の世界に出た

パンプスで歩くには少ししんどい

私にまとわりつく不安で足は重たいです


この町はとても小さくて

でも何か満たされないこころがあった

君と過ごす今に浸っていたいけれど

いつか来る明日に胸は躍るんだ



フレグランスの薫りを身に纏って

私はいつもタイル張りの道を歩く

赤いヒールは鋭く地面を叩いて

私がここにいることを知らしめている


この町はとても小さかった

なにも手に出来ない気がしていた

歩く姿は街に染まったとしても

いつか来る明日に胸は躍るんだ



静かな椅子の揺れに身を任せて

私はこの家でただ毎日昔を顧みる

ただ生き急いでいたあの頃の春も

この老婆の存在を必ず証明しているんだ


この町はとても小さかった

でも、この町を心は求めていた

老いていく自分を憎み また愛しながら

いつか来る明日に胸は躍るんだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る