閑話「魔族」
どこかにある城の一画。
円卓に七つの影が座っている。
「すべて失敗に終わるとは。いまの王国とやらはなかなかやるではないか」
とひとつの影が堅苦しい口調で話す。
「手ぬるかったのではないか?」
若い女性的な声が不満を込めた声を出した。
「かつて我らを破った者たちだからな。あなどるのは学ぶ能力がない愚か者だけだ」
と別の影がたしなめる。
「同感だ。今回の作戦で王国三大戦力以外にもあなどれない者が最低でもひとり、存在していることが判明したではないか」
最初の影が堅苦しい口調で賛成した。
「あやつの言い分を信じるならばだが、四番手と言える若者がいるようだ」
「疑う理由はあるまい。経験は浅くても実力がないわけではない」
と影たちは王国の戦力を認める方向で話を進めていく。
「王国以外はどうだった?」
と最初の影が話をふる。
「皇国はさほど手ごわくなかったわよ。侯爵令嬢を二人さらったわりにはね。戦力を秘匿してる可能性はあるかしら?」
若い女性の影が優越感と疑問を含んだ声で話す。
「皇室のためにしか動かぬ戦力ならあるだろうな。それ以外は弱いかもしれんが」
影たちは結論をすぐには出さなかった。
「帝国は強い弱いがはっきりしてる感じだな。強い貴族の家の護衛は強かったが、そうじゃない奴らは脆かった」
「他の国はそこまで強くないし、戦力を隠す余裕もなさそうだ。王国、帝国、皇国の秘匿戦力あたりが想定すべき障害となるだろう」
影たちは打ち合わせを進める。
「あーあ。いっそのこと、どっかの国をぼこっちまえば話は早いんだがな。俺らなら勝てるだろ?」
ひとつの影が若い乱暴そうな声をあげた。
「その場合、人間どもも戦力を集結させて反撃してくるだろう。前回のようにな」
「前回の敗因は人間の底力と団結力を見誤った点だと言える。同じ失敗をくり返したくない」
「ちっ」
乱暴な影は舌打ちをしたものの反論はしなかった。
「じゃあさ。人間の団結を壊すように仕掛けるのはどう? 仲たがいさせて潰し合わせて、戦力を消耗させたところを狙うの。これならいいんじゃない?」
女性の声にほかの影たちは視線をぶつけ合う。
「たしかに……こちらの戦力を失わず、人間どもだけが損耗する策があるなら実行するべきだな」
最初の堅苦しい表情で話す影はすこし思案しながらも支持をする。
「試してみて損はないだろう。かるく数百年は待ったのだ。あとすこし待つくらい誤差でしかあるまい」
「同感だ」
「ちっ、仕方ねーか」
乱暴で好戦的な影さえもしぶしぶ賛成したので、彼らの方針は決まった。
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