最終(5)
本堂の中では風が吹き荒れ、
清正は柚莉の近くにいた
神使の姿が見えなくなると、清正は荒れ狂う旋風の中心でうつむいて立つ柚莉のそばへ行き声をかけた。
「柚莉くん」
「清正さん、オレの近くにいると危ない……。離れたほうがいいよ」
すべてを諦めたような柚莉は小さな声で言う。清正が柚莉の肩にふれると熱くなっていて、うつろな表情でぼんやりとしている。清正は
「柚莉くん、前に約束したことを覚えているかな」
「え……?」
「『見えないものを対処する方法をつくる』って話だよ」
急に「約束」と振られた柚莉はなんのことかと思ったが、神社で環と戦ったときに
環と戦った翌日、
このとき柚莉は環を仕留めてしまおうかと考えたが清正が現れたので
「環が怪我させてしまってごめんね。腕を見せて。治すから」
「このままでいいよ」
「どうして?
「治ったりしたら柊兎が変に思う。柊兎の前ではできるだけ普通でいたいんだ」
「わかった……。
ところで柚莉くん、環のこと許してくれないか?」
「それは……難しいよ」
「どうしても……ダメかな?」
「オレを攻撃するのはいいんだ。でも柊兎を巻きこむのは許せない。
あんなふうに見えないものを使ってくるのはズルイよ……。
次は対処できないから、そこで仕留めないといけないじゃないか」
「じゃあ、オレが対処法をつくって柊兎くんを守ると約束したら、環のことを許してくれるかな?」
「……それができるなら……考える……」
柚莉は清正との会話を思い出し、柊兎の身の安全が約束されることに気づいて表情がやさしくなる。期待した目で清正を見た。
「対処法ができたんだ。だから環のこと、許してやってくれるかな。
……前回も今回のことも」
「…………」
「環はさ、柚莉くんにも視えた
感情表現が下手でうまく伝えることができない。誤解されやすくて、なかなか
それなのに柚莉くんにはストレートに接していて……。そんな環を初めて見たよ。それがとてもうれしくてね。
環のやり方が間違っているのはわかっている。でも……許してやってほしいんだ」
柚莉は苦しくて意識が飛びそうになりながらも、清正の話を聞き
「ありがとう、柚莉くん。
今から柊兎くんに邪気返しを担う『式』をつける。この『式』はオレが邪気返しをする場合と同じ
だから安心して」
今から行うことを柚莉に伝えたら、清正は立ち上がって手で
蒼い煙はまとまり螺旋を描き始めて上空へいく。だんだんと大きく太くなっていき見事な龍の姿となる。
上空で浮かぶ蒼い龍は清正が
柚莉は龍が飛んでいったのを見届けると安心してガクリと膝をつく。体はまぶしく発光していて、光が強く輝きすぎて姿が見えにくくなっている。
「柚莉! 柚莉、大丈夫なのか! 兄貴っ、どうなってるんだ」
近づくことができない環は遠くから清正にようすを聞く。清正は青ざめた顔で心配そうにしている環を見て、もうひとつ決心したことを実行することにした。
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