第15話 最終話「兄と弟」

最終(1)

 付き合っていた彼女からフラれたり、青龍寺しょうりゅうじ総本家から気分が悪くなる仕事を受けたりしたたまきは、本人が思っている以上にフラストレーションがたまっていた。


 また他人ヒトの心が欲しいと初めて切望していることにもとまどっていて、錯綜さくそうする感情に振り回されて落ち着かない。


 寝つけない日が増えており、気分転換するため夜中から部屋の片づけを始めた。


 気づけば朝を迎えており日が差しこむ床を見ると、本の束に交ざったアヤカシの水墨画を貼り付けている御朱印帳が目にとまった。


(そういや「狩り」を数カ月やってねえ。

 目をつけていたアヤカシの中に羽化したやつもいるかもな。

 ひさしぶりに狩りをしようか)


 狩りの再開を決めた環は、すぐに準備に取りかかったが、足りないものがあることに気がついた。


(あー……。和紙が切れてたんだっけ)


 アヤカシを水墨画に変える和紙は環の特製だ。かなりの霊力チカラをこめた呪術を施してつくっている。呪術を使うには下準備が必要で、簡単につくれる代物ではない。


(しょうがねえ。また青龍寺 ウ チ 家でつくるか。

 数枚ならすぐに完成する。

 朝なら本堂も使わないし、親父や兄貴にも気づかれないだろ)


 必要な物をそろえると環はバイクにまたがり青龍寺家へ向かった。


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