虚無(2)
イラついている
少し前まで彼女がいて付き合っていたが突然別れを切り出された。だがフラれたことにイラついているわけではない。むしろ他人に使う時間が減ったことにスッキリしている。
自由に使える時間ができたというのに青龍寺は有効に活用できていない。楽しみにしていた
(なにかが足りねえ。空虚がある)
モヤモヤとしている理由がわからず、イラつく青龍寺は暗くなっても部屋の電気をつけていない。開けたままのカーテンから月明かりが入ってきて物の影を映している。
ソファーにかけて室内にできた影を見ていたらスマホが鳴った。だるそうに手を伸ばしてスマホを取り、画面を見た
仕事の依頼だ。
スマホを操作し仕事内容を読んでいく。冷ややかな目で確認していき、すべてに目を通したら「800万」とだけ返した。
青龍寺はふぅとため息をつくと、ソファーから立ち上がって出かける準備を始めた。顔は無表情で目は冷ややかなままだ。
動きやすい服装に着替え、無言で護符に呪符など呪術に使う道具一式をまとめていく。必要なものをそろえたらバッグの中に放りこんだ。
数分で準備は終わり部屋を出て駐車場へ向かった。車に荷物を載せたらエンジンをかけて夜の道を走り始めた。
青龍寺は個人で『
青龍寺が受けた今回の仕事は『排除』。文字どおり対象を消すことだ。仕事内容にはなんの感情もわかないが、彼にとっては嫌な依頼主だった。
自宅から車を走らせ高速を使い数時間かけて依頼主のところへ到着した。そこは人里から少し離れた山の
仕事の依頼をしてきたのは幼少期を過ごした「青龍寺総本家」。車から降りた青龍寺は、いい思い出のない場所を見て、チッと舌打ちしてから屋敷へと向かった。
居間に通された青龍寺に対応したのは機械的に業務を行う窓口担当だ。平然とした顔でスマホに送った依頼内容と同じことを説明していく。
青龍寺は排除の対象には関心を示さず、必要な情報を得るためだけに質問をする。最後に窓口担当が地図で指した場所をスマホの地図アプリで確認したら屋敷を出ていった。
車へ戻ると載せていたカバンの中から必要な呪符と護符を取り出す。屋敷の横に広がる暗い森を前にして、青龍寺はライトも持たずにスタスタと入っていった。
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