第11話 鬼ごっこ「深淵を……」
鬼ごっこ(1)
電車の中、ワイヤレスイヤホンで音楽を聞いているふりをして、
誤解がないよう解説するが、
青龍寺は電車を使って
これまで
(
余裕がないというか、怯えているというか……
なにかあるのか?)
青龍寺は異変には気づきながらも、好みではない
電車内には青龍寺のお気に召す
大学4年の青龍寺は、卒業に必要な単位は取り終わっている。それなのに彼が大学へ通うのは退屈しのぎと情報収集ができるからにすぎなかった。
キャンパスを移動していると青龍寺の姿を見つけた友人たちが、すぐに声をかけてやって来て談笑が始まった。話していると講義室へ向かっている学生が目にとまって興味をもった。
青龍寺が関心をもったその学生の肩には黒いモノが憑いている。
それなのに気になった理由は、学生に憑いているモノのようすが変だったからだ。
(おかしいな。
形状のある
だが黒いモノは個性をなくして『念』だけのはずだ。
嫉妬や怒り、恨みなどがまとまった黒い塊。恐怖という感情はないはず。
でもアレは怯えてるみてーだ)
学生の肩にしがみつくように憑く黒いモノは、落ち着きなくユラユラとうごめく。食事をしている草食動物が、肉食動物を警戒しているような感じだ。
青龍寺は友人たちと会話を続けながら目で追う。黒いモノは周囲の警戒を続けていたが、ビクッとなにかに反応し、すぐさま憑いていた学生の身の内に入っていった。
青龍寺は黒いモノが急に隠れたので、なにかを視たのかと思い、目だけで周囲をうかがう。
すると地面がゆれ始めて、キャンパスにいる学生たちが「地震だ!」と口々に声を上げた。ゆれはしばらくして収まったが、久しぶりに大きめの地震だった。
キャンパスにいた学生たちは地震に驚き、あちらこちらで動揺した声が聞こえている。青龍寺は友人の話に合わせつつ、黒いモノが憑いた学生のようすを視ていたが、地震があって以降、黒いモノが現れる気配はなかった。
(あの黒いモノは地震を予知して怯えていたのか?
それとも……)
あたりを異常に警戒していた黒いモノを視たことがきっかけとなり、青龍寺は最近の
ところで―― 青龍寺がコレクションとして集めている
区別の基準を言葉が通じる・通じないで分けるとすれば、たいていの
ちなみに人、つまり幽霊系は亡くなって肉体を離れたのに成仏できず、魂だけが現世に残った個体だ。
生前会話ができていたので霊体は話せるものが多い。だが霊体も長い年月が経てば言葉を忘れるのか、それとも一つの思いに固執するからなのか、意思疎通ができなくなっていることが多い。
言葉を失い、一つのことに固執するようになった幽霊は、時を経るごとに人らしさがなくなり、
話を戻すが、青龍寺は
そのため意思疎通ができる
「大将、もう逃げらんねーから、諦めて教えてくれよ。
おまえら、最近なにに怯えてんの?」
「ワシは知らぬ」
「おいおい~、しらばっくれるなよ。なにかに怯えてるじゃねーか。
なあ、いいじゃねえか。教えろよ。
おまえらは同類のこと気にしねーじゃん」
「知らぬものは知らぬわ」
「仕方ねーな。切り刻んでいくか」
シュウウウウゥゥ――……
「マジか……。自分から消えるのかよ」
せっかく話ができる
(なぜ
隠されると、よけいに興味がわくぜ)
『なあ、キツネ。
『…………』
『おい、聞いてんだろ?』
『…………』
『チッ、おまえもだんまりかよ』
青龍寺は白銀のキツネがなにかを知っているとわかっても、聞き出すことができずにいてイライラする。ほかに秘密を探る方法がないので、仕方なく
(妖力の強い
一体なにに怯えてやがる。
天災などの自然か? それとも脅威となる存在がいるのか?)
情報が少なくてやきもきしていると、青龍寺はふと
(そういや、
普通は「鬼」と言うと、天災や悪霊なども含めて「人に害をなすもの」のことを意味する。
でも今回のはそれではなく、人にも
残忍で強大なチカラをもつこの鬼が現れると、
(桂のことだから嘘ではないが、話は
くそっ、モヤモヤするぜ)
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