心霊スポット(4)

 翌日。

 大学構内にいた青龍寺しょうりゅうじに、うれしそうな顔をした弥勒院みろくいんが声をかけてきて報告した。


「あのあと上野うえのに無事に解決したことを連絡したんだ。

 そしたら、さっき連絡があってさ、秋葉あきばくんはもうすぐ学校へ登校すると弟さんが話してきたんだって。本当によかった。

 たまき、助けてくれて、ありがとう」


「そうか、よかったな」


「不思議なんだけどさ、秋葉くんは変だった間の記憶が全然ないって言ってたんだって。廃屋にいたはずなのに、目が覚めたら家にいて驚いたらしいよ」


「そりゃ体から抜けた魂は、違う世界というか、空間が違うところにいたからな」


「 ?? 」


「ああ、いいや。親父さんから聞けよ。

 さて、と。無事解決したんだから、交換条件のんでもらうぜ」


「わかっているよ」


 友人からの頼みごとが無事に解決したので弥勒院はご機嫌だ。人のいないベンチで座って話を聞いていた青龍寺は、立ち上がって弥勒院の肩に腕を乗せ、「今から飲みに行くぜ」と言って、そのまま弥勒院を引きずって大学を出ていった。



 青龍寺の提示した交換条件は、今回の『はらえ』に自分が関わったことを黙っておくこと、終わったあとに飯をおごること、そして情報提供だった。


 居酒屋で青龍寺はご機嫌の弥勒院に酒をすすめて、さらに気分を良くさせておいてガードを下げる。


「いいのか、環、オレが手柄を立てたことにしておいて」


「んなの、どうでもいい」


「それより、けいの親父さんがこの前の会合で聞いてきた話を教えてくれよ」


「いいけどさ~、環のお父さんもいたはずだから、すでに環が聞いたものと同じ内容なんじゃない?」


「親父から聞いてはいるけど、桂の親父さんは顔が広いだろ?

 オレの親父が知らないこと知っていそうだからさ。

 な? 頼むよ?」


「んー……、えっと――」


 普段は上から目線の青龍寺から頼むという言葉が出て、気を良くしたほろ酔いの弥勒院は、思い出しながら話を始めた。


 弥勒院の話は、だいたいが青龍寺が父親から聞いていた内容と同じものだった。だが一つだけ、珍しい話が飛び出した瞬間に青龍寺の目の色が変わる。


 青龍寺は顔には出さなかったが、弥勒院から『祓』の対価をちゃんともらえたことに満足し、うまい酒を楽しんだ。


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