呪具(6)

 数時間後――


 青龍寺しょうりゅうじのスマホが鳴る。手に取って画面を見ると、ため息をついてから放置した。だがずっとスマホは鳴り続けていて、コールはやみそうにない。青龍寺は嫌そうな顔をして電話に出た。


たまき! いくらなんでも高すぎるぞ!

 それに、親御さんに失礼じゃないか――」


 電話の主は弥勒院みろくいんだ。開口一番に大声で文句が始まり、音量が大きいので青龍寺はスマホを離して聞き流している。


(うっせえなぁ。あれでも格安だぜ?

 けいのトコの客だから抑えてたっていうのに)


「おいっ、環っ、聞いてんのかよ!」


「あー、はいはい。んじゃ、次からは親父さんに頼めよ。じゃーな」


「あっ! 待てよ!」


「なんだよ、オレ眠いんだけど」


「いや、その…… あの……さ……、ありがとう……。助かったよ……」


「……ああ。じゃーな」


 嵐のような電話が終わり、青龍寺は静まり返った自分の部屋で天井を見ている。弥勒院からの突然の依頼で気晴らしはできたが、また退屈が迫ってきた。


(桂のおかげで暇つぶしができたけど物足りないなあ。

 そろそろ目をつけていた獲物が育ったころかな。

 それとも別のアヤカシでも見つけに行こうか……

 なんにしても退屈だぜ。もっと強敵が欲しいなあ)


 霊力チカラを持て余した青龍寺は欲求不満がたまり、なにか面白いことが起きないかと期待している。すると地面がゆれた。


(最近、地震の頻度が増えたな)


 そんなことを思いながら、退屈を埋めるために次の標的を考える。目をつけているアヤカシは何体かいる。その中からコレクションに加える候補を思い浮かべていた。


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