第3話 呪具「落としもの。拾う際にはご注意を」
呪具(1)
きれいな
勾玉はガラス製なのか鉱石なのかはわからない。それは愛らしいピンク色をしていて、遠くからでも目を引いた。
(あれ? あそこになにか落ちている。なんだろう。
わあ。ピンク色の石だ)
とてもきれいだったので拾い上げて空に
落とし物だけど気に入ってしまい、良心は痛んだが警察へ届けずに持ち帰った。
【一日目:当日】
「ただいまー、お母さん、見てー!」
「おかえり。なあに、どうしたの?」
「きれいな石、拾っちゃった」
「え?」
帰宅したアイは家へ帰る道すがら拾った勾玉を母親に見せる。差し出された手には、2センチほどの勾玉がのっている。
「まあ、きれいね」と答えながらも、母親は娘からいきさつを聞きながら勾玉のことを気にしている。
(きれいな勾玉ね。これは水晶?
もしかしたらかなり高価な品じゃないのかしら)
娘が勾玉のことを自分の宝物を自慢するように話している姿を見て、水を差すのは悪いと思ったが口をはさんだ。
「ねえ、アイ、これは高価なものかも。警察に届けたほうがいいかもしれないわ」
「ええ~、でもお」
「持ち主が探しているかもしれないわ」
「んー…… そうだよね……。明日、警察に届ける」
残念そうな顔をしたアイを見てチクリと胸が痛んだが、聞き分けのいい娘は部屋へと入っていった。
「あーあ、こんなにきれいなのにお別れか~。
でも困っている人がいるかもしれないし……。持ち主の所に帰りたいよね」
眠る準備が整ったアイは、ベッドの上に寝転びながら拾った勾玉を見ている。名残惜しそうにしていたが、そのうち勾玉を机に置いてスマホをさわり始める。しばらく操作していたが、眠気が襲ってきたようで電気を消して就寝した。
アイの寝息が聞こえ始めたころ、暗い部屋でなにやら怪しげな気配がし始めた。
机に置いてある勾玉がほのかに光を放っていて、ぼんやりと光る糸のようなものが出ている。糸は机の下へと伸びていて、先をたどってみると、アイの右手人差し指とつながっていた。
勾玉はしばらくの間は薄く光を発していた。それが徐々に明るくなりだして、光のサイズが拡大してきている。そのうち勾玉を中心に丸い形をした光の塊になると、光は勾玉からフワリと浮かんで離れ、ユラユラと動き出した。
光の塊はゆっくりとベッドがある方角へ移動し、ベッドの脇までくるとフワフワと浮かんだまま止まった。それから丸い形状が崩れ始めて、ほかの形をつくっていく。
数秒後、丸い光の塊だったものは、20代くらいの半透明をした女性の姿に変わっていた。女はベッドで眠るアイを見下ろしていて、ボソボソと言葉を発している。
「こいつとあの女がいるせいで、あの人と一緒になれない……。
こいつとあの女のせいで……」
女は、目と
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