第176話
「貴方は嫌がらないのだな」
何に?と思う立花。
「表面上は笑っているが、大抵の人間は私と話すと面倒そうな顔をするのだ」
わかってるじゃないかと思う立花。わかってるならやらなきゃいいのに、やってしまうのは好奇心が抑えられないからだろうかと次いで想像する。
「ゴットフリートさんはこちらの話も聞こうとしてくださるので会話は苦ではありませんよ」
理解してくれるかどうかは別として、と内心付け加える立花。
「そういうものか」
何に納得したのかはいまいち立花はわからなかったが、ゴットフリートは私物らしき紙束と羽ペンを自前の魔法袋から取り出すとその場で猛烈な勢いで書き始めた。
あ、これは疑問を書き出してるんだなと判断した立花は、ぶつ切りの会話で終わっていたが何を言うでもなくやらなければいけない事に取り掛かる。
〝光の神、少しお時間いただけますか?〟
そのままの姿勢で念話を調整してパネスへと連絡する立花。
〝……はい。なんでしょう〟
少し間をおいて返答があった。
〝太陽の神についてコルディアさんに確認していただきたいのです。
月の神に対して執着して妨害しているようなので、直接会った時にそれを止めるように言って了承しなければ何らかの対処をさせて欲しいと〟
〝あれはそもそも非協力的ですからね。そのような事をせずとも祝福の制限に対しても拒否をすると思いますが〟
〝太陽の神には戦神の件は伝わっていますか?〟
〝おそらく。豊穣と繋がっているでしょうからそこから伝わっているでしょう〟
〝だとすると祝福に関しては拒否はしないかもしれないです。なんとなくですが、その辺の駆け引きをしてきそうな神のような気がして……〟
〝そうですか。少し待ってください〟
今確認してくれるのだろうかと、パネスの言葉を待っているとすぐに回答はきた。
〝確認しました。コルディア様より太陽の神の領分を超えると判断した場合は戦神と同じく対処するようにとの事です〟
〝……その判断は私達がしてしまってもよいのですか?〟
〝よろしいそうです〟
相変わらず丸投げだったが、都合がいいと言えば都合がいいので立花はわかりましたと了承した。
〝ご確認いただきありがとうございました。
予定では二十日弱程度で太陽の神を確認に行きますので、事が起きるとすればそのくらいになります〟
太陽の神は戦神と同じく影響範囲の大きな神なので事前に伝えておく立花。
〝わかりました。どのような経緯にしても協力的になってくれると私も嬉しいです〟
よき結果になるよう期待しておりますと言ってパネスとの念話が切れた。
とりあえず許可を貰えたなと立花は軽く息を吐いた。
〝倉橋、エンデ、フレイミー。太陽の神について、光の神経由でコルディアさんに確認を取った。こちらでよしなに対処してしまっていいそうだ〟
〝わお。さすがコルディアさん。丸投げ~〟
〝なんというか…雑で心配になります。この世界の神……〟
〝こちらにとっては都合がいいという事でいいんじゃないのか〟
軽い倉橋に微妙なフレイミーと割り切るエンデの返答があり、それぞれにそうだなと思う立花。
〝太陽の神は中央大陸の南東あたりに道があるから、フレイミーあとで付き合ってくれるか?〟
それなりの体力になったとはいえ、このメンバーの中では最弱の自覚はしっかりある立花。一人行動しないようにフレイミーに頼むと了解ですと応えがあり、礼を言ってそのまま上からのルート確認を開始した。
〝そういえば〟
立花が確認をしていると、フレイミーが立花に念話をしてきた。
〝ん?〟
〝中央大陸の南東って、ダナン王国のあたりですよね〟
〝そうなるのか〟
〝ダナン王国……大丈夫ですか?〟
〝ん?? 大丈夫って?〟
〝独特な食文化のところですから〟
独特な食文化?と首を傾げたところで立花は思い出した。
ダナン王国は虫を食べる食文化。
〝あー……直行直帰で。視界に入れなければ大丈夫だよ〟
たぶん。と付け加える立花。
極力見ないようにしとこうと思った。腹に入ればみな同じという言葉もあるが、口の中の食感とか想像するとなかなか厳しい事になりそうだった。
「こんなものか……」
不意に無言で紙にペンを走らせていたゴットフリートが手を止めた。
そして立花に近づくとその紙束を差し出してきた。
「今聞きたい事を纏めたものだ」
「あ、はい。わかりました」
受け取り目を通していくと、魔法関連の疑問と勇者の亜神に対する耐性と突破力の疑問、それからこの小屋で使われている道具についての疑問がぎっちりと書き連ねてあった。
予想以上の量にこれはパソコンに取り込んで処理したいと思う立花。目の前でうずうずと答えを待っているゴットフリートには悪いが、ここで口頭で答えてしまうと今後も同じ事になるので一度紙から目を離す立花。
「ざっと確認しましたが、回答は後日まとめてお渡ししますね」
あからさまにがっかりした顔をするゴットフリートだったが、キッチンの方からごはんできましたよ~という倉橋の声でそれぞれテーブルのセッティングや配膳の準備を始めたので、しぶしぶと引き下がった。
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