第44話インフルエンサー

ニマァ


「詰めが甘いなぁ弟くん。それじゃ動かないよ人間は「それじゃどうすれば、、」


 大体下地は整ってるんだからあとはラクショーでしょw


 なんて言いながら天音博士は踊るようにパソコンのエンターキーをはじいた。


 私と天音が言いあっているところをずっと見せられている、ユリと住凪博士。


 みるみる内に部屋のそしてビルの、街の風景が変わっていく。


 それに続いて狭かったはずの事務室が変形を始めた。


キュィン


ガコッ


ガシャ


 それによってぐっと広くなった部屋の中央には巨大なスクリーンが配置され、街の風景が映し出された。

_いつの間にこんな仕掛け。

 私だって徹夜で働いたりしてたのに。


 そして画面に映ったビルのモニターには咲枝天音博士の顔が映されている。


 街中天音でいっぱいだった。

「そんな平和は私が許さない!」

 一斉に街の天音が喋った。

 おぃおぃ弟が可哀想すぎんだろうがそんなん。

 仮にも姉さんなんだろ。


「いいんだ。姉さんを止めるのが俺の役目だから」

 その台詞は相変わらず私のマシンメトリィから流れていた。

_変な感じ。


 ここにきて壮大な姉弟喧嘩が幕を開けた。


 観客は全人類。

 地球上の全コンピューター対マシンメトリィアースよりリモートコントロールされた地球上の全マシンメトリィ。

_これホントに二人だけでやってんの?


 なまじ技術がわかるだけにどれくらいのことを二人がやっているかが身に沁みてわかった。

 考えただけで頭の神経がすり切れるかと思った。

_臨場感半端ねぇ。


「さよなら姉さん」

 咲枝天音博士のマシンメトリィを持ってしても、全てのコンピューターを操るのは難しいのか、、

_いや、違う。


 マシンメトリィアースと全人類分のマシンメトリィから莫大なジャミングを受けているんだ。


 私のマシンメトリィもさっきから様子がおかしかった。

 全身を震わせている。

 まるで何かの病気のように。

 数多の疫病やプログラムエラーを克服し続けてきたマシンメトリィがこれ程の異常をきたす状況。

_これがマシンメトリィ同士の闘い。


 目には見えない何かが生身の人間の私の体をも蝕む。

_ここにいては。

 しかしどこにも安全地帯などなかった。

 それは住凪社長も気づいていて、、

 しかし、ユリだけは違っていた。


「これがあなたの答え、、」


 流石にザラついた声はしていたが概ね無事なようで、しかしユリは誰のことを言っているんだろう。

 主人であるタケルなのか、原作者である天音なのか。

 虚空を見つめて涙を流すユリは悲しそうに、


「世界のために最愛の人を手にかけるというのですね」



 俺の中でだけ考えた作戦のはずだった。

 しかし、姉さんはノリが合う。

 必ず乗ってくれると思っていた。

 考えたことをあえて姉さんには伝えず地球に送り返した。

 みよと一緒に。

 みよは何か言っていたけど、今度ばかりは断った。

_ごめんな、こうでもしないと。


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