垣内天音

 暗い廊下の只中、4人分の足音が響いていた。


 みよそしてユリ、咲枝社長と住凪社長も天音博士の立ち上げた会社の地下へやってきた。


「ホントにキーホルダーで開くんですか?」

 思わずのみよに

「やってみてから言うものよそういうことは」



 住凪社長が答えた。

_前にもこんなことが、、

 その時は天音博士が相手だったのをみよはハッキリと覚えていた。



 あの人は突然私を連れ出して、地下倉庫に向かった。

 ジャラジャラと太い鎖を手懐けるように解き、、


「どうしてパスワードでロックしないんですか?」



 すると彼女は鎖を外し終えて、

「皆マシンメトリィ使ってるでしょ?

だから、こっちの方が効果あるんだよ」

 と重い扉を押し開けた。


 あの時は結局ただの世間話とタケルの話をしながら、


「もし、私が最終調整版マシンメトリィを持ち出したら、これで対抗してね?」とこの場所を教えられていた。



 そこにあったのは最終調整版マシンメトリィに唯一対抗できる力を秘める「垣内天音のマシンメトリィ」が眠っていた。



 そうだ。

 まだ垣内天音のマシンメトリィがある。

 向こうにいったのは咲枝天音のマシンメトリィだ。

 それを思い出したのは扉の前に立った今頃になって。


「そうね「今は「本人も」


 何やらこそこそ話す声が遠く聞こえた。

「私がやります。この中で天音を知ってるのは私だけだから、私にやらせて下さい」

 大体聞こえた声で何となく察した。



「私しか天音のマシンメトリィは動かせない」

「待ってください。天音さんのマシンメトリィにはまだ薬が残っているかもしれません」

 すると私はユリに微笑む。

「大丈夫」

 私もワクチン接種してるから。

 そう言って垣内天音のマシンメトリィを再起動した。


 

 静かに瞼を開いたマシンメトリィは虚ろな目で私を見る。

「やっぱりこうなったね」

 あの人と寸分違わぬ声で私に語りかけると、突然彼女は抱きついてきた。

「ち、ちょっ「静かにして今同期してるから」



 私は勿論生身だった。

 それでもできるのか。

 天音は何でもできてしまうらしい。



「ワンタイムキー」



 天音が呟くと、、

 どうしてか生身の私の頭の中をプログラムが駆け巡る。

「あまり長いことは続けられない。このまま最終調整版マシンメトリィを乗っ取るよ?」

 そういうと私の意識も乗っ取られ気がついた頃には初音さんのいるところにいた。




 仮にサイドアースという言い方をしておこう。

 そこに辿り着いたのは最終調整版マシンメトリィの初音さんの意識がある場所、、二重人格的なものの中にいた。



「ここに何をしにきた?」



 彼女の人格は私の人格を受け入れるつもりはないらしく、毅然と振る舞っていた。

「天音さんと話をさせて」



 好きにするといい。

 何故か特に抵抗するでもなく道を譲ってくれた。

「いいの?」


 いいんだ。やはりアイツに私は必要なかった。


 ?


 私は気にはなるが、することはなく前へ出た。

 そこには今にも天音さんに襲われそうになっているタケルの姿が。

 相変わらず押しに弱く、引きに強い。

_だからタケルが好きになった。



 私が弱っている時は必ず助けにきてくれる。

 でもそんなタケルだからこの世界、一連のマシンメトリィ計画には必要不可欠な人材なんだと思う。



 だから、天音さんのそばにいるのは仕方ない。

_でもそれは。

 そういったことを許したという意味じゃない!



「私の声聞こえてる?」

 意識の中から目の前の二人に声をかけた。

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