私という定義

 今私は道を譲られたとはいえ主人格を押し退けて意識より前にいる。



 初音さんは主人格でありながら開発者にそれを否定され、電源まで落とされた。

 こうなると私も長くここにはいられない。

 だが、事情はどうあれこれはあんまりな対応ではないだろうか?




 仮に私が初音さんの立場ならもう生きた心地はしない。

 自殺まで考えるかもしれないし、復讐だって、、



_何とかならないのか。

 博士はどうして初音さんを開発したのか。

_初音さんに会いたかったんじゃないのか?



 かつて生まれてこれなかった初音さんを可哀想と言ったのは本気なんだと思う。

 その頃には大体の知識は備わっていた博士ならそれがどういうことかはわかるはずだ。

_気持ちはまとまらなかった?

 4歳の身には堪えるものかもしれない。




 いやしかし待て。

 知識のある人間なら割り切る感情も学習できているはずだ。

 まだ何か、、あるはずだ。



 私はそう思うとこの最終調整版マシンメトリィの再起動を試みた。

 初音さんには悪いが私を主人格とした。

 それにもう妹が自分のために作った体は使いたくないだろうし。




 体中を巡る再起動プログラムの羅列を横目に一応、


「初音さん。私はやるよ。こんなのは無責任だ!生きてる人にも、亡くなった人にもさ。だから一緒にやってみない?」


 声はかけた。

 でも反応はない。

 それでもいい。

 まだ時間はかかるだろう。

 好きな人からいらないって言われたんだし。

_そりゃ辛いよね。


 私なら身を投げる。

 ゆっくりと目を開いて私はわなわなと震えることになる。


「待ちなよ」

 見ない間に他人のカレシに手ぇ出してさ。

 だからアンタはキライなんだよ。


「その手を退けな」

 取られた。

 私が言いたかった言葉は初音さんにぶん取られた。

「一緒にやるんだろ?」

 私にしか聞こえない声で初音さんは囁く。

_勝手なとこはそっくりだよ全く。


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