第41話世界平和とアオハルと

「ここから見るとよくわかるでしょ?」

 そうだな。地球を外からこんな形で見るとは思わなかったよ。



「タケルはマシンメトリィの機能ちゃんと覚えてるかな?」

 そりゃ、、種類が増えすぎてわからないところも増えたけど、大体は。



「地球のマシンメトリィは地球の健康維持のためにあるんだよ?」

 え?

 世界平和に人類の平和。

 でもどんなに頑張ったって地球がダメになったらおしまいでしょ?

 だから地球さんにも健康に気を遣って、長生きしてもらわなくちゃね?

 途中で爆発しちゃったらご近所惑星さんにも迷惑かけちゃうし。




 あぁそうか。

 超新星爆発のことをそんな風に考えてたなんてな。

 地球のマシンメトリィから地球の健康診断を読み解って、その都度足りない成分を地球に分けてあげるんだな。



_そこまでは気が回らなかった。

「ね、タケル。いちゃいちゃしたいな」

 そういうことは、、

「あ、まだ私が姉弟だと思ってるの?」

 実は頭ではわかっていてもどうしてもその感覚は離れてくれないんだ。



「それとも、初めてはみよちゃんがいいの?」


 それは、、その、、

「じゃあさ、ここなら無駄な法律もないから捕まることもないし、お外に出ちゃう?」

 アダムとイヴはそんな感じだったんだろうか。



「恥ずかしいの?」

 普通そうだよと言いかけたが、違う。

 やっぱりみよが、、


「そっか。ごめんね連れて来ちゃって」


 ふわ


「ッタケル?」「ごめん天音俺、、やっぱり」


 言わないで。わかってる。

 でも、その代わりしっかり触って欲しい。

「みよちゃんは私とタケルなら別にいいって言ってくれてたんだよ」


 バカだなアイツ、そんな言い方したら自分が身を引くみたいじゃないか。


「姉の前でよく始められるな」


 あ!

「そろそろ止めてくれると思った」


 クスクス笑いながら離れる天音さん。

 俺の方は初音さんがいることをすっかり忘れていた。

 彼女がここにいるのにはワケがある。



 初音さんは地球のマシンメトリィであるこの星に直接アクセスすることができる。

 有事にはその成分を吸い取り地球に転送することができる。

_でもそれだと、、


「大丈夫だよ」


 こっちはまだ生まれたばっかだし、向こうに分けても大丈夫。

_耳打ちはやめて。

 ぶるっとしながら離れる。




 するとその間に初音さんが入ってきた。

「そろそろハッキングを始めてもいいか?」

「せっかちさん。まぁだだよ?」

 それよりお前たちは人間だろ?

 向こうの状況はわからない。

 私だけでどうするつもりだ。




 まぁまぁもうちょっと待ってみな?

 すぐ味変すっからさ。


「誰が、、ッ」


 来たっしょ?

「これは、、お前のマシンメトリィなのか?」

 初音さんの頭の中だけに通信が届いたらしい。


 それがまさか機能を停止したはずの天音さんのマシンメトリィからの通信。


 一体誰が、、


「私の声聞こえる?」


 初音さんの口から聞き慣れた声。


「みよか!」


 みよは少し疲れた声で初音さんの口を借りて話しだした。

 みよ達は俺が去ったあと何とか追いかける方法はないかと画策し始めた。

 その中でみよだけはそれじゃダメだとわかっていた。


「でも、、手詰まりじゃね」


 と考えを巡らせるみよは天音さんの性格に視点を移してみた。

 すると流れるように思考が浮かんでくる。


 私はなぜか天音さんに気に入られていた。

 それはたしか、住凪社長もだったはず。

 わざわざ社長のところに行ってまでやりたかったこと。

 タケルの元を離れなくてはならなかった理由。



 それに気づいた頃にはもう手遅れで、、

 結局タケルは天音さんに取られてしまった。


「でも話はここで終わりじゃないはずだよね?博士」


ニマァ


「そうこなくっちゃ」


 タケルはいい彼女見つけたね?

 スッゴい優秀。

 私の弟子にしちゃいたいくらい。


「それと誰がタケルとの仲を認めてるんですか?その手を離して服を着なさい」


 おっと、初音お姉ちゃん負けちゃダメじゃん。


「遠隔で申し訳ないけど、初音さんは乗っとりましたから」


 タケル。これなら私と、、


「早まるなみよ。そのまま来ると俺は初音さんに迫られていることになる」


 構わない。初音さんを通して私は貴方に抱かれ、、


「離・れ・ろ」


 しなだれかかってくる初音さんをグリグリ剥がしている俺に後ろから抱きついてくる天音さん。

_助けはないのか。


 すると初音さんの力が弱る。

「流石天音のマシンメトリィなだけのことはある。この最終調整版マシンメトリィと張り合うとはな」


 初音さんの意識が戻った?


「ふふ、逆らうの?」


 いや、まだか?


「この体は人間としての初めての、、」


「ごめんなさいお姉ちゃん」

 私お母さんに頼んでお姉ちゃんの細胞サンプルを手に入れようとしたんだけど、、

「やっぱりダメだったの」

 お姉ちゃんは存在してなかったんだよ。



「それじゃこの人はやっぱり、、」

 そう。みよちゃんが言う通り私のプログラムとマシンメトリィのAIを組み合わせたもの。

 これによしんば人格でも芽生えてくれたらと思ってさ。


「でも、失敗しちゃった」



「何が失敗か!失敗なものか!私はここにいる!ここにいるのに!天音!私を、、認めてくれ!」


「んーん。お姉ちゃんなら既にみんなのために地球の緑を守ってくれてるよ」



 生まれることができなかったのではない。

 生まれることをあえて選ばなかった初音さんは今地球上で精霊王として、環境整備に当たっている。

 天音さんはそう説明すると初音さんの首筋に手を回した。


ガクン


 意識を失い膝から崩れ落ちる初音さん。


「姉さんこれは」


 その通り。スイッチ切っちゃった。

 泣きながら笑う姉さんの顔はとても見ていられなくて、俺はそっと抱きしめるのだった。

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