翠楼[すいろう]のマシンメトリィ
第37話新たなマシンメトリィ
「ここが課長の創立した会社か」
高いビルを見上げた私は心なしか空気の軽さを感じながらビルへ入る。
ヒュッ
自動ドアが開くと吹き抜ける風に乗って何か小さな生き物が通り過ぎるのが視えた。
思わず
パシッ
捕まえた。
じたばたするのを眺める。
「何この子」
うるうるした目で見逃してもらえるように訴えてくるが言葉はない。
「喋れないの?」
何度も頷いて意思を示す。
とりあえず放してあげたら伸び伸びと辺りへ飛び出した。
すると爽やかな風がビル内を行き渡る。
「へぇ、スゴいじゃん」
精霊まで
ハッとして口を両手で塞ぐ。
「いらっしゃいませ
_流石に何も言わなくてもわかるか。
住凪さんへのお目通しを願う前に受付の者が私の前に現れた。
言われるままにエレベーターへ乗り込む。
社内には常に風や水が通っていて建物内とは思えないほど開放的だった。
目の前に立っているのもマシンメトリィのようだ。
_私の知らないタイプかな?
「待ってましたよ。あなたなら必ず来ると思っていました」
ホッとしたような顔で住凪社長は私を迎えてくれた。
「どうして私が来ると?」
逆にどうして来ないと言えるのか。
あなたは私の見立てではかなり承認欲求が高いと視えました。
悔しかったんじゃないですか?
マシンメトリィで負けたの。
「そうだね」
でも、それでいいんだって思ってる。
誰かが私をモデリングして次に繋げていってくれたらって。
私のことなんかどうでもいい。
タケル達や次の世代が育ってくれればそれで。
「わかりました。本音なんですね?」
じゃあ、こんなのはどうでしょう。
「志半ばに亡くなっていった方々の魂をインストールできるとしたらあなたはやりますか?」
あぁそれは私向きかもね。
「ではその方向でスケジュールを組みます」
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