第32話相刺相殺[そうしそうさい]

 マシンメトリィには遺伝子耐性というプログラムがある。

 このプログラムはいつでもON-OFF切り替えができるが、時には勝手にONになってしまう事がある。


 近親相姦など遺伝子の損壊を招く行為を防ぐためだ。

 そこまで気にすることでもないかもしれないが念のため実装されていた。


 仮に間違いが起こっても遺伝子組み換えによる元素修復があるので問題はないはずだ。

_そういうことじゃないよな。


 仮にだ。

 俺を例にとってみよう。

 姉さんが本当に姉さんだったら、、

 かなりマズいことになっていたはずだ。

 俺がいくら無視していてもアレだけアピールされていればオスとしての本能は働く。

 であれば行為に及んでいたことも考えられ、遺伝子に異常を持った子供が生まれた可能性もあり、、


 結果として形になったものを変換してしまえるのが「遺伝子組み換え」であり、それを未然に防ぐのが「遺伝子耐性」である。


 では具体的に「遺伝子耐性」とは如何なるものか?

 簡単に言ってしまえば「嫌いだから、または苦手だから避ける」というもの。

 ただ避けるというワケではない。


 相手が同じ意味の言葉を話しているのに理解できないようになる。


 使っている言葉も場面も変わらないのに意味が伝わらなかったり、伝わってこなかったりすることがある。


 そうなると近づかないようになってしまうワケだが、これが仕事や親兄弟の場合どうだろう。


 近づかないワケにもいかず、どちらにとっても邪魔にしかならない。

 お互いの成績を下げ続けることになってしまう。

 また同じようにその逆の相手も存在する。


_俺達の間では前者を「相刺相殺」後者を「相思相愛」と呼んでいる。


 お互いに自分の能力の何倍ものことができてしまうようになる。


_姉さんはたぶん。

 自分一人でこれになろうとしている。


 具体的には複数のマシンメトリィに自分のコピーをペースト各地に配属、影響力を散布するというものだ。

_実際にもうやってるしな。


 全国に配置された自分と逐一情報交換をし、足りないものを確認して微調整を続けていた。


 そこに俺達の居場所はなかったと言っていい。

 俺達が気づける程度のことは大体一人、自分たちでこなしていた。

_俺は姉さんの敷いたレールを走らされていたんだ。


 だがみよは違う。

 独自のレールを作り出して社会貢献をしようとしていた。

_もう。


「そろそろ余計なこと、考えてんじゃない?」


 あ、、

 見透かされた心を隠すように目をそらした俺は「別に」とわかりやすい態度をとってしまった。


「私にはまだタケルが必要だよ」

 まだまだ教えて欲しいことが沢山あるからさ。

「一緒にいてよね?」

 柔らかい笑顔でみよは俺の手を掬い上げるようにして取ってくれた。

「ありがとう」

_みよは相思相愛の相手なのかもな。

 コイツがいると俺は力が湧いてくる。


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