第31話キミの心に
ところで街の様子はどうかといえば、人間の姿が見えない。
マシンメトリィは人の姿をしているのにだ。
まだマシンメトリィでも歩いているならわかるが、それもなかった。
社長は姉さんの仕掛けを利用して世界征服を達成した。
ならなぜこんなに人がいないのか。
姉さんはマシンメトリィによる人のための社会を目指していた。
姉さんはマシンメトリィは人より前に出てはいけないと考えていた。
人間はマシンメトリィのお母さんなのだからと。
その彼女が世界を征服すると言ったのだ。
_そしてその人はいない。
では世界はどこへ向かっているのか。
指導者がいなくなった世界を治めたのが、社長だった。
社長の世界は絵に描いたような独裁でマシンメトリィはまるで兵器。
だと思ったんだが、窓の外にもTVにも誰もいない。
_いやTVは普通か。
普通に放送はされていた。
放送の中は賑やかでいつもと同じだった。
「笑ってごまかせか」
誰かが勢い任せに言ったことを繰り返し俺は呆れ返った。
正直今の状況をわかってないと思ったからだ。
マジの世界征服に対してそれはあまりにも状況を理解していないと思ったからだ。
_何もわかっていない。
父さんが俺達を騙して世界を征服して数ヶ月。
数ヶ月もだ。
何ヶ月も抵抗できずにいた。
向こうに半数ほどのマシンメトリィが抑えられている以上手出しはできなかった。
「待って。手出し、できるかも」
_何だって?
みよが何か閃いたらしく、他の社員と連携してマシンメトリィにハッキングをし始めた。
「おぃ」
大丈夫。弱点なら一通り知ってるでしょ?
そりゃ、、たしかにそうだけど。
たしかに俺達は遺伝子組み換えから元素分解に至るまで姉さんの下で学び尽くした。
カタカタ
カタカタ
今事務室内にあるパソコンを一斉に稼働させて、街のマシンメトリィにハッキングをかけていた。
「ハッキングいうな。マシンメトリィに語りかけてんの!」
大勢でか?しかもパソコンで?
「うっさい。話しかけんな」
別に話しかけてはいない。
「目がうるさい」
あぁそうですか。
俺は目を逸らしながらもこっそり画面を覗いてみた。
そこに映る誰もいない街の景色。
だが、やがてそれぞれの建物からマシンメトリィは素体を連れて出てきた。
「何て言ったの?」
「隠れてないで出ておいでって」
明らかにそれだけではなかった。
「何かつけ加えてない?」
「今この世界は私の征服下にあります。
言うこと聞かないといたずらしちゃうぞって」
怖い怖い怖い!
それにお前は何もしてないだろ?
「向こうは知らないじゃん」
だから騙されたのかもしれないけどさ。
「へぇ中々面白そうなことしてんじゃん」
姉さん!!?
目、鼻、口、匂い、性格、、、
どれをとっても姉さんだった。
「触ってみる?」
それで既に触らせているとこも姉さんだった。
この弾力性。間違いない姉さんだ。
しかし、なぜ?
「実はこっちは素体。
マシンメトリィはそこで寝てる」
「え?戻せるの何で!?」
みよは真面目に驚いていた。
「理由が必要?私だから」
そう言った姉さんはやっぱり姉さんだった。
一度インストールした魂を姉さんはもう一度素体に戻していた。
当のマシンメトリィはすやすや眠っている。
_何でもできるんだな。
もう何されても驚かないぞ?
「流石に今回は焦ったけどね」
一服盛られたと気づいた姉さんはすぐに隠してあったスペアに魂を逆流させてマシンメトリィをハイスピードモードに切り替えた。
以降マシンメトリィの元素分解速度に任せて素体で暮らしていたという。
_俺達に合流しなかったのは社長に勘づかれないためか。
さーて、社長はどこまで進めてるかな?
「何だまだこの程度かぁ」
まだ私の出番じゃないや。
でも、折角だしやっとこう。
「みよちゃん、スッゴいね」
あ、ま、ありがとう。
みよは手元の一台から事務室内全てのパソコンを遠隔操作で起動し、プログラムを流していた。
「流石に私一人で全部は無理なので、社員さん達に手伝ってもらいました」
珍しい。姉さん相手にみよが敬語を使うなんて。
「ばか。尊敬はしてるって言ったでしょ」
いきなりこそっとみよが耳打ちしてきてびっくりした。
「いやいや、たしかにスゴいよほぼ助けなしじゃん。社員さん助かったでしょ?こんなガイドまでついてさ」
画面下に暇そうにしているアプリくらいのサイズの人型マスコットがいた。
姉さんがチョンとするとゆっくり起きた。
姉さんと目が合うなりキョドって知らないフリを決めこむ。
「まだデータが足りなくて人見知りするんです」
_ダメじゃん。
このAIマスコットも可愛ぃ!
寝起きだというのに姉さんは偉いテンションでみよと女子トークを始めた。
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