第25話修正パッチ

 その結果劇的に世界は変わり始めた。

 目に見える形では犯罪者の数が減った。

 報道されていないだけかもしれないが、強盗の類は少なくなり、殺傷事件に至っては0にまで落ちた。

 といってもこれは週間の話。


 まだ配信をダウンロードしていない人も多かったからだ。

 そこまで切羽詰まった人が少ないというのは救いだと思った。

「伸びないね」

 不満そうに首を傾げる姉さんに

「どんなプログラムかわからないからダウンロードするか迷ってるんじゃないかな?」

 みよが呟くと

「現実を変えるなんて無理だと思ってるのかな」

 俺もそう溢してしまう。

「だったら諦めるの?それで何とかなる人はそれでいいよ?でもそうじゃない人は?」

 世の中にはちゃんと生まれて来れなかった人も沢山いるのに!と姉さんが珍しくキレた。


 そこまで私達が背負わなくてもいいんじゃない?

 とみよが背中を擦る。

「だって、だって、、、!?」

 と姉さんはついに涙まで流した。


 待ってくれ。

 何の話だ。

 俺には姉さんがそこまで思いつめる理由がわからなかった。


「初音になんて言えば」

 私なんていなければ、、

 おい。誰のことだ?


 家系図も勿論漁ったことのある俺にも、覚えのない名前だった。


 自分より先に生まれて、本当はその子に「天音」って名前を付けるつもりだったらしいことを垣内家の母親に聞かされたという。


 その後咲枝家の養子縁組みなど様々なことが重なり天音以外の垣内家の人間はそれを忘れていった。


「そんなのあんまりじゃない?

みんなに忘れられたって私だけは、、妹だけはお姉ちゃんを覚えておきたいの」


 会ったことはないけど。

 せめて名前くらいは。

 姉が死産になって数ヶ月、次女が生まれた。

 お姉ちゃんは生まれてもいなかったから、名前も貰えていなくて、お姉ちゃんに付けるはずの名前を私にあげたから、お姉ちゃん名前なくて可哀想って言った私のために、お母さんが初音って名前を付けたんだ。


「だからそんなに」

「だったらちゃんとしようぜ?」

 みよ?みよが男らしくなっていた。

 あ、恥ずかしいのかそのセリフが。

_しかも壁ドンだしな。


「なぁマシンメトリィなら何かいい作戦あるんだろ?」


「少し待っていて下さい」

 珍しく考え込むマシンメトリィ。

 会社内の天才達も固唾を呑んで見守る。


「双翼、元素、旧型のリンクを復帰することは可能です。

承認制を一時的に停止させればあるいは強制的にインストールすることはできます。

どうなさいますか?博士」

 そんなことをすれば個人の意見を確実に無視することは明白だった。


 だが、それしかないのも現実だった。

 あとは姉さんがどうするかだった。

「やって。もう個人の自由とか言ってられない。

そうしないと皆死んじゃうから」

 涙のあとでカサカサになった肌をそのままに

「タケル手伝って。私とタケルなら世界を救える」

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