第23話ハラスメント

 マシンメトリィがその勢力図を広げるようになってから実は新しいハラスメントが生まれていた。


 元素マシンメトリィを病気で行けない自分の代わりに仕事に行かせることが少なくない現代、長期入院をしていた本人が社会復帰、させて貰えなくなるケースが増えていた。


「みんな口には出さないけど、同じとは思えないくらい能力差がある」と。

 やがて自分から辞めていくことになる人の数は増えていった。


 勿論その逆境を乗り越える人もいる。

 しかし、生身の人間はそんなに強くはなかった。


 姉さんはこの件についていつも苦言を呈していた。


「どーしてこういうことしかできないの人間は」


 ここまで影響力を持つ彼女の一声ですら、人間が変わることはなかった。


「仕方ないよ姉さん。これはボクらじゃどうにもならない」

「一部のバカはどこにでもいるよ」

 みよは苦々しい表情で拳を握りしめた。


 みよもイラだちを隠せないようだった。

「タケルは気にならないの?」

 なるけど「よしこうしよう!」

 は?ちょっと俺がまだ喋ってんのに!

 そんな人はリサイクルしちゃおう。


 何だって?何物騒なこと言ってんの?

「待ってそれ、いいかも」

 みよまで!

 まだ何するとも言ってないのになんでわかるの?


 みよは人間だよね?

 姉さんはマシンメトリィだから頭の回転早いのはわかるけど、みよもわかったの?


「何でわかんないの?」

 え?マジで?俺がわからんのがおかしいの?


「悪い部分だけを集めて元素分解するんですね?」

 みよの元素マシンメトリィが説明してくれた。

「あ、そういうことか」

 いぢわるしちゃダメですよ?

 好きなんですから。

「言うなっつてんだろ」

 もうバレてるんだからいいじゃないですか。


「そういう問題じゃねぇんだよ」


 ドスを利かせた声でみよが元素を止める。

「そういうことは、、軽々しく口にしちゃいけないんだ」

「来るべき時に「そんなことに拘るあまり今まで言えていないのでは?」



 みよが負ける音が聞こえた気がした。


「今はその話じゃねぇだろ!」


 今のはみよだ。

 みよは恥ずかしいと男みたいになる。

「んぅ」

 タケル、、

 と泣きそうな顔をそわそわとゆり動かしていた。

_あ、マズいな。

「落ちつけよ」


ちゅ


 頬にキスをするとみよの体から緊張が抜けていくのがわかった。


「で、姉さんその悪い部分だけ元素分解ってのはどうするんだ?」


 姉さんの方を向くと姉さんは自分の頬を指差していた。

 私にもしろと?


「そしたら教えてあげる」


 彼女でもない女性に頬とはいえキスするなんて、、


「アタシなら大丈夫だよ」


 それをどう受け取ったのかみよが背中を押してくれた。

 妙な関係であることは否めなかった。


ちゅ


「許す」

 満足そうに姉さんは頬を擦りながら、

「私が考えているのはさっき元素マシンメトリィが言ってたので、大体合ってるよ」


 俺が口を押さえて黙っていると、

「大体ね。タケルも知ってると思うけど、元素マシンメトリィに比べて生身の方が情報量も質量も多い。

だから、部分的にというのが難しいんだよ。

だったら一度にまとめ買いした方がお得なんだ」

 あ?最後のだけわからん。

 まとめて分解ってことで合ってるかな?


 グッジョブ!


「タケルもとうとう私の特殊な言い回しに慣れたんじゃない?」

 慣れたくねーよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る