第18話当然の決意
ついに始まった。
第三のマシンメトリィ。
その開発が。
「張り合いがあるなぁ」
「社長。ライバル会社からのお手紙です」
そういうのは私開けられないから。
いえ、天音博士へとありますが。
「え?そう?」
本当は開発部に回してもらうべきなのかもしれないけど、急ぎならここで読むね。
カサカサ
拝啓
「!?」
始めましてというべきかな。
いきなりこんな手紙でごめんなさい。
会いに行くのもどうかと思ったので手紙で失礼します。
ぽろぽろ
最初はわからなかったわ。
ただあなたの手の癖がマシンメトリィになっても残っていたのを見て確信が持てたの。
まだ手紙は続いていた。
でも、私はもう相手が誰だかわかっていた。
手の癖まで知ってるのは一人しかいない。
_あの時のことを知ってる人しか。
滲む涙を振り払い、私は秘書に問う。
社長の秘書だろうと関係ない。
「これは誰が?」
さぁ警備のものから直接手渡されたので。
_普通じゃない。
この手のものは普段は一度社内を巡る。
警備から手渡しなどと不用心すぎる。
気づかせるための布石か?
「手紙の人は?どっちに行ったかわかる?」
たしか東の方だったかと。
東?ますます怪しい。
そっちは何もない。
いや、キロほど歩けばあるけどさ。
_それはないのと一緒でしょ。
到底歩ける距離とは思えなかった。
「その人は左耳にピアス付けてた?」
「はい。チェリーのピアスを」
私の予想があっていれば、、
「バイクを借りるわね。手続きは道中でします」
マシンメトリィの体はそういうことができた。
バイクをガレージからエントランスホール前に移動させて、それから私は下に降りた。
胸のスイッチを押さえ、ライダースーツとヘルメットを着込む。
行く先に見える岬への道のり。
_たぶんあそこにいるはず。
ブォンッ
暖気の時間がもどかしい。
これも今度改造してやろうか。
岬への最短ルートが脳内再生されるが無視して歩ける道を選んでいく。
もうそこそこ時間は経っているので、岬近くまで着いているかもしれない。
正直マシンメトリィの足ではそれほど速くは走れない。
あくまでも人間の細胞から作られているためだ。
それにこんなに焦る理由はもう一つ。
_嫌な予感がする。
焦り岬への道をなぞる。
_いた!?
「お姉ちゃん!」
ッザザ
私は投げ捨てるようにバイクを降りて、お姉ちゃんのところに走った。
ッフン
空間に吸い込まれて消えるバイクとヘルメット。
会社に転送されたであろうバイクを確認もせずに
「懐かしいね。私がずっとお母さんと呼ばれるのを嫌がってたから」
当たり前だよ。お母さんがそうして欲しいって言ってたんじゃない!?
私はそう言いながら抱きついた。
「体は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ?天音のおかげでね」
もうちょっとがんばれる!
「ちょっとじゃヤダ!そうだ、私、、会社作ったの!そこでなら
「天音、生まれたことを後悔するんじゃない。生き物はその繋がりを大切に生きていくのよ?」
「怖くはないの?」
「怖い」
「じゃあ何で!」
「それも含めて生命だから」
わから、
お母さんは人差し指で私の口を止めて、
「天音はもうわかってるんでしょ?
こんなスゴいものを作れたんですもの」
だって、だって、だって!
「神様に作れて人間に作れないワケがない」
私はそう聞いた時、天音らしいなって思ったわよ?
生放送であんなこともしちゃったしね?
お母さんは人よりちょっと長く生きられるだけで幸せよ?
自分の子供と同じように生活できるお母さんって今までいなかったもんね?
「ありがとう」
お母さんのマシンメトリィは30代くらいだったが、そのセリフには貫禄があった。
「諦めない。私は死にたくない全ての人のためなら命を差し出す覚悟がある」
「だろうね。それでこそ天音だ」
お母さんも手伝っていい?
私は素直に口端を綻ばせて頷いた。
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