第16話限界突破

 現在公式に発表されているのは旧型のペット型マシンメトリィと人型の新型マシンメトリィを基本にした病院や介護施設といった医療機関に配属の医療用マシンメトリィ、学校などの教育機関に配属の教師型マシンメトリィなど多岐に渡る。

 そのためジャンルによって必要な知識が異なるのでOSを作り変える必要があった。


 そこは流石に天音さんだけで何とかできないので、その他の社員も手分けして当たっていた。


「調子はどうかな?」

 ちょっ博士!

 男子にも女子にも分け隔てなく接してくれるのはいいが、博士は度々距離感がない。

 今だって男性職員の後ろから覗き込むみたいにして、、

「博士!喜ぶからやめて下さい!」

 大体女性が止めるパターンになっていた。

 プログラムならマシンメトリィに組ませればいいという考えがなかなか浮かばないのもこのためで、博士もその辺は気にしていなかった。


 実際マシンメトリィだけでは手が足りないのだ。

 世界中に広がったマシンメトリィ。

 当然この国に本社はある。

 しかし、支店もこの国にしかなかった。


 どうして世界中に配属されたマシンメトリィに支店を任せないのかとある職員が聞いたところ。


ニィ


「私がやりたいから」

 また博士は自分を追い込んでいた。

 博士は生粋のドMだという噂が流れそれが国中に広がるのは時間の問題だった。

 ドMに付き合わされる職員はたまったものではない。


「博士がそういうなら、、」


 但し一部を除く。

 女性職員が顔を赤くしてはけていく。

 言った通り博士には女性ファンも多い。

 あんなふうになれたらと、彼女のいるこの会社を目指して勉強をして、実際の姿を知りさらに惚れ込む者も決して少なくはなかった。


 しかし、賛成するものばかりではないのも現実である。

「博士。やりたいと言ったからには手伝って下さいね」

 と連れていったのは壮年の女性職員。

「はーい」

 この年代の人には彼女の色目は効かない。


 ここのプログラムについて教えて欲しいんだけど。

「あ、ここはですね」

 失礼します。と席を代わり古風なキーボードを打ち込んでいく。


「え?そんなことを」


 どうかしましたか?

 何でもないような顔で振り向き博士は問いかけた。

「いえ、何でもないわ」

 少し傷ついたような顔をして女性職員は去っていった。



 何なのあの娘は。

 さも当然のようにあんなとんでもないプログラムを組んでおいてケロッとした顔で、、

「あれでは限界値を越えてしまう」

 そうか。いやでもそんな、、


「終わりましたよ?課長」

 あなたは、、

 そうね頼んでいた仕事があったわね。


 別に彼女に恨みはない。

 いや、そうでもないか。

 溢れる才能には一抹の恨みはあるし、あの美貌にも腹が立つ。


 若さだけではなく、才能も美しさも全てを持っている。

「持っていないのは夫くらいか」

 とはいえあの美貌である。

 世界中に知られた顔もあってそれも時間の問題だろう。

 する気があるようにも見えないが。

 とにかく、いかがわしいものを開発した罪を償うといい。


「課長?私やっぱりやめます天音さんは私の憧れですし」


 そりゃぁやっぱり怨めしいような気持ちもありますし、この!って思ったこともありますけど、あの人は何もできない私にも甘いくらい優しいんですよ?

 だからごめんなさい。

 メモリーチップ、ここに置いておきます。


カタッ


「わかったわ。迷惑かけたわね」

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