そして動き出す
第14話人として姉として
最初は形だけのものだった。
そこまでの必要はないとさえ揶揄された。
だが、新しいものが生まれる時というのはそんなものだとのちの天音は語る。
「みんなが助かるならそれでいいんじゃない?」
くすぶる僅かながらのバッシングも跳ね退けて彼女は進みたい方へ進んだ。
かつての弟も言った。
「天才なんてわりとどこにでもいる」と。
その天才に気づいてもらうためだと天音は言う。
私が先頭に立つ理由はそれだけで。
本当はタケルとアオハルしていたいと。
私のことなんて何とも思ってないとしてもタケルが欲しいと彼女は言った。
マシンメトリィの体で。
たとえ作られた体でも、生み出されたものでなくても、人を愛することはできる。
全ての人が最低限そうあってほしいと彼女は考えていた。
世の中は不平等だ。
わかりきったことで割り切るべきことでもあるのかもしれない。
しかし、忘れてはならないのは、人は五体満足で生まれるとは限らず、健康に生まれるとは限らない。
_お姉ちゃん。
もしお姉ちゃんが生まれて私が生まれていなかったとしても、それは構わない。
だが、お姉ちゃんの犠牲の上に私が生まれていたとしたら、、
それは許せなかった。
生まれてしまったものを生まれなかった人に還元する方法を探していた。
マシンメトリィはその副産物でしかなかった。
「もう無理なのかな」
それでもつい溢れてしまう。
諦めるような声。
「らしくないよ?姉さん」
「タケ」ゴメンねタケルじゃなくて」
少し期待していたのかもしれない。
タケルが助けてくれるって。
「タケルは今おやすみ中」
寝顔でも見に行く?
いや、いい。
彼女の目の前で襲っちゃいそうだし。
「だと思ったw」
でもそんくらいでいいんだと思う。
じゃなきゃホントに姉さんじゃないよ。
「私は、、「知ってるよ」
ホントに姉さんじゃないんでしょ?
タケル言ってたよ。
本当の姉さんだったら良かったのにって。
そしたらこの気持ち抑えられたのにって。
今カノに向かってそりゃないよねー。
「悔しかったなぁ」
私ったら
みよは泣くに泣けない苦笑いで
「浮気相手はマシンメトリィかぁ」
ホントに造り物か確かめてもいい?
そう言うとみよは天音の胸元に手を差し込んだ。
天音は我慢するような表情のあと、
「んぅ」
「スゴいね。ちゃんと感度いいんだ」
私こんなに可愛くないなぁ。と途中でやめて、
「負けてらんないネ」
私はまだ見せてもいないしさ。
マシンメトリィの分類は書類上では機械工学だった。
マシンメトリィは生物学には分類されていないらしい。
いかに生身に近いとはいえ元素を組み替えたものは科学の産物に当たるという考えからだった。
「どうせ一部のわからず屋が嫌がらせしてんでしょうけど」
無駄な抵抗だよね。
こっちには博士もいるし、タケルもいるんだからさ。
保険適応は無事に適応され、全人類が知るところのマシンメトリィ。
それでも問題は山積みだった。
その残る問題をタケルは一人で抱え込んでいた。
「ホントそういうとこは姉さんに似てるのにね」
なんで血の繋がりないんだろ。
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