第12話博士のムチャブリ

 教室内である噂が流れていた。

「双翼のマシンメトリィお前買った?」

 授業中だというのにヒソヒソと

「いや、ウチは旧型マシンメトリィだけだよ」

「あんなん全部揃えられんの一部の富裕層だけだろ」

 俺はあのお姉さんだけでいいよ。

 言えてるw


 世界的シェアはNo.1だった。

 しかし、細かくみると中流以下の層には未だ行き渡らないのが現状だった。

 そこでと取られたレンタル制度。

 一度使ってみて欲しければそのままという形をとった。

 そこにも加えて保険適応がされるという。


 もっと殺到するかに思われたこの制度は意外に伸び悩んでいた。


「リースとか言われてもなぁ」


 正体不明のものに世間の出方をまだ見ている者も少なくなかった。


「お前イケよ?」


「ウチはもう金がない」

 ここまでくると教師に叱責を貰いそうなものだが、先生はまだ来ていない。

 最近ではマシンメトリィの教師を代役に立てて本人は来ないという新しいサボり方が流通していた。


「またサボりか?」

 その上教師にはマシンメトリィを貸与する学校も増えていた。

「はい!着席!うっさいよそこ!」

 やっと入ってきた教師はいつもの制服ではなく、

「げ!ありゃ博士じゃねぇの!?」

 私服のヒラリとした薄い色のスカートは

「うわぁ天音博士可愛いすぎw」

 一目で男子の心を掴んでいた。

 まさかこの状況を引き起こした張本人が教壇に立つとは思っていなかった生徒たち。

 その中の女子が手を上げた。

「はい!先生はどうしたんですか?博士はなぜここに?」


ムフ


「先生はここには来ません!今日は私が特別講師です!」

 してやったりな顔の博士はチョークを手に取り、、

「今日から三日間私が特別カリキュラムを組んでいます!」

 まずマシンメトリィとは何か?

 なぜ今必要であるか?あると何がいいのか、どうやって作ればいいか。

 三日かけて教えていきたいと思います。

 さらに!最後はテストも出しますよー。


えーーーー(・_・;)


 でもこれで単位も取れます。


え!?


「さっき一部の富裕層だけだとか言ってた人?」


 私は全人類に普及させたいので満点とれた人は無料で双翼のフルセットをあげちゃうよ!


わぁーーーーーーー!


 教室のガラスが割れんばかりの歓声が上がった。

「フルセットったら旧型と新型と双翼のヤツだよな!」

 勿論です!

「満点とったらオレは兄さんを治すんだ!」

「私は父さんを「ボクは姉さんに」

 矢継ぎ早に教室内が騒ぎ立て、


 はいはい。

 では始めますよ?


 仮にも基礎教育や高等教育をこなしている生徒たちが、少ししか歳の違わない博士の黒板に書いた内容が最初からわからなかった。


 空気を悟った博士は、

「ウチの弟くんならこれくらい楽勝だよ?」

 と挑発した。


 そりゃ双翼作った人だもんなぁ。

 敵うワケねぇよな。


「弟くんも最初は普通だった!」


 たしかに私のノートをガン読みしてたけど、理解できないとこが殆どで調べ回ってたんだよ?

 海外にも行ったし、世界中の言葉、文字に触れて回った。

 それでもわからなくて最後は作りながら学んでいったの。

 三日でそこまでしろとは言わないけど、何とかしようとはしてみてね?


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