第11話取捨選択
タケルへ。
お姉ちゃん死ぬんだってさ。
みよちゃんへ。
タケルをよろしくネ?
挨拶はこれくらいにしてこれからのこと。
マシンメトリィはそろそろ実用化されているかな?
どこまで実装されてるかはわかんないけど、そこから先は不老不死を目指してがんばりたいと思ってるの。
各企業と協力してエライザを抑制しながら生命維持を目指し、永久機関を作り上げる。
今の人間になら決して不可能ではないと思ってるの。
そこからは見たこともないプログラムが書き込まれていて、それを俺達は俺達のマシンメトリィに書き込んでいった。
_プログラム言語だよなこれ?
本当はマシンメトリィ本人に読み取らせた方が早いんだろうけど、それじゃ不十分な気がして自分たちで書き起こしたものをマシンメトリィに手打ちで書き込んでいった。
_マシンメトリィも元は人だからな。
「タケル。私何してんのかな」
作業中、みよが呟く。
当然の迷いだったのかもしれない。
マシンメトリィとか一体なんだよ?
そんな気持ちもあったかもしれない。
だけど、
「私ね?タケルのことは好きだけど、どうしてもお姉さんのことは好きになれなかったんだ」
初耳だった。
みよがちゃんと俺を好きだといったのも、みよがちゃんと姉さんを嫌いだと言ったのも今初めて聞いた。
その上で隣のマシンメトリィが口を開く。
「うん。ちゃんと知ってた。だからジェラシーしちゃってたんだ。時間がないこともあって」
少しくらいタケルに好きになって欲しかったんだ。
姉弟でそれはないってハッキリ断られちゃった。
みよちゃんの勝ちだね。
「姉さん」
マシンメトリィとはいえ姉さんの魂をインストールさせた体はちゃんと姉さんの匂いがした。
「一度も私には振り向かせられなかった」
「そんなの姉さんらしくないよ?」
ふとした優しい笑顔を見せたみよがマシンメトリィに抱きつく。
されるがままの体勢で姉さんは、
「こうやって恋敵にも優しくできる」
そういうところがタケルも好きなんだろな。
柔らかい空気が流れた。
ところで魂のインストールをどうやって世間に認知させたかをそろそろ説明しなくちゃなと思う。
最初は魂のインストールなんて誰も信じていなかった。
当然だ。
信じたばかりに死にましたでは取り返しがつかない。
だから姉さんは一肌、いや全部脱いだ。
これは勿論ものの例えだが、具体的にはマジックショーのようなことをした。
動画サイトなどでは流さず各放送局にかけ合って、テレビ放送をできるようにしてその上で自分の死亡を報道、のちに生放送による魂のインストールをバラエティで流した。
視聴率はそれほどではなかったが、その後当時のネットワークによって拡散されて瞬く間に信頼性を獲得した。
それを可能にした天音博士の名前は信頼の代名詞のように扱われ、次いで現れた弟もそれに並び今では双翼のマシンメトリィと呼ばれるまでになっている。
「俺達としてはまだまだだけどな」
まだ読めない数式が多々あった。
全部のプログラムを組むとどうなるのか考えただけで恐ろしい。
「怖いよね。でも怖がらないで私はいくよ?タケルは?」
みよがいくなら俺だって。
そう言ってみよの手をとった。
「二人なら大丈夫」
だって私達は信頼と奇跡の代名詞なんだもん。
でしょ?と笑うみよは久しぶりに可愛く見えた。
「おぃおぃ」
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