第4話遺伝子登録

「マシンメトリィを公式の製品にしろか」


 渋い顔をしながら元の椅子に座り直し大臣は言った。


 たしかに私がそれを認めれば医療機器としての認可が降りたことになり、医療保険も降りる。


 よってマシンメトリィの開発が進めやすくなり、量産化も進む。

 だが、今現在そこまでやるような事態にはなってはいない。


「大臣。なってからでは遅いのです。

病気というのはある日突然やってきます。

闇に紛れて。

これまでにも沢山の方々が望まない最期を迎えることになっています。

そしてそれは望まない遺族も生み出しています」


 しかし、我々には知っての通り他にも沢山の案件を抱えている。


 それ一つの問題に足踏みをするワケにもいかないのが現状だ。


「では私を使うというのはどうでしょう?」


 その時手を上げたのはマシンメトリィ本人だった。


「私の演算能力なら一瞬で済みますし、プログラム入力だけそちらの手動でやって頂ければ。

あとは何とでもなります」


 そうか。マシンメトリィとは元々機械だったな。

 あまりに精巧に作られていて錯覚していたよ。


「光栄にございます」


 彼女、マシンメトリィは豊かな胸元に手を添えて軽く会釈をした。


「では私は具体的に何をすればいい?」

 マシンメトリィが別室のコンピューターシステムとリンクして大臣の仕事をこなしていく。


 すると世間の評判はガラリと変わった。


 それまで大臣をこき下ろしていた者までもが味方についた。


「これで下地は整いましたね」


「これをして、キミは何が目的だ?」


 私の、私達の目的は「魂をデジタル化して元素マシンメトリィ」を制作し不老不死を可能にすることです。


「正気か!キ「姉ちゃん!」


 より正確に言えば半永久的にとなりますが。


「詳しく聞かせて貰えるかな?」


 元素マシンメトリィは本人の遺伝子を元に制作します。


 そのためには本人様の遺伝子登録が必要となります。

 次にその中から傷の少ない遺伝子を選びマシンメトリィの基を作成、本人様を元素分解、完成したマシンメトリィにインストールします。


「待て。元素分解とは?」


 魂の数値化です。


「それは私達マシンメトリィが安全に行います」


 姉さんの言っていることは大分無茶な話だった。

 聞いた限りでは理屈は通っているように聞こえるが、だがこれは犯行予告にほど近い。


 そもそも元素分解というのがわかり辛い。

 大臣はよく聞いている方だと思った。


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