第3話医療用マシンメトリィ
マシンメトリィの販売価格は高い。
だからまずは医療用から配属させていくことになった。
元がとれた段階から順次一般家庭にも流していきたいと考えていた姉さんはまず、保険適応を目指した。
医療用マシンメトリィを使う患者様は重篤な病気が殆どで、致命的な段階にあることが多い。
体が保たない状況にある患者様の魂をマシンメトリィに仮インストールしておき、一ヶ月ないし二ヶ月素体の様子を見ながら、状況によってはそのままマシンメトリィを買取って頂く場合もある。
そのための保険適応だった。
その状況については推して知るべし。
ことこのマシンメトリィに仮インストールするための同意書は手術のものとは別に書かなければならない。
姉さんはこの点についても危惧していた。
「ただでさえ不安な上、得体の知れないものにまでサインとなれば不安は爆発するだろうになんで別に書かせてんの?」
などと院長様を小一時間追い詰めていた。
「それは私の一存ではない」
という院長様の表情は硬く
「正直言えばキミはただの小娘だ。
その話を逐一聞いていてはキリがない」
そう言われることも折り込み済みだった姉さんは自分の元素マシンメトリィを連れて建物をあとにした。
「タケルいくよ。現場に言ってもやっぱり意味はない」
もしかしたらということも考えていたのだろうが姉さんは政府本拠地に向かうことにした。
「議事堂に入れる女の子っていないんじゃないかな」
俺の一人ごとも耳には届かず、姉さんはまっすぐ目的の部屋を目指した。
トントン
「失礼します」
普通秘書官に中継ぎして貰って入れるような部屋に直接入る一般人。
想像通りの豪華な部屋に一人だけ初老の男性が座っている。
「キミか。マシンメトリィを作ったという女性は」
正直あまりいい気のしない視線を男は姉さんに向けた。
それだけで俺は掴みかかりそうになる気が湧いたが、姉さんにそれを制される。
「たしかに私は降って湧いたようなただの一般人です。
しかし、それとこれとは別です」
姉さんはこれから未曾有の危機が訪れると言った。
それによって世界人口の約三割ほどが減少すると見られています。
それを隣に立っていた元素マシンメトリィが表にして表す。
_ホワイトボードなんだ。
全然最新の技術っぽくなかった。
「それには必ずマシンメトリィの技術が必要になります」
難しいところはホワイトボードに、
_キレイな円グラフ。
語りは姉さんがという形で話は進んでいった。
大臣もご承知の通り我々の体には遺伝子というものが刻まれています。
それは人間のみならず全ての生き物を形作るのに必要な膨大な量の情報を書き込まれているとお考え下さい。
それによってどの生き物のどんな形になるかが変わってくるのです。
「その話はまだかかりそうかね?」
恐らくこの後もまだ色々とやることが多いのだろう「大臣」は姉さんの話を遮った。
「大臣」はそんないつあるとも知れぬ話には付き合えないと姉さんの話を一蹴して部屋を出ようとする。
「お待ち下さい」
そこを遮ったのはマシンメトリィ。
人間のSPがマシンメトリィを抑えようと数人がかりで跳びかかるもあしらわれ、「大臣」を引き止めることに成功した。
「私は博士の言うことを証明できます。
故にあなた方に危害を加えることはしません」
マシンメトリィに覆い被されたままの「大臣」は
「では私に何をしろと?」
簡単なことです。
あなたには発表してもらいます。
人類滅亡の危機を。
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