第3話医療用マシンメトリィ

 マシンメトリィの販売価格は高い。

 だからまずは医療用から配属させていくことになった。


 元がとれた段階から順次一般家庭にも流していきたいと考えていた姉ちゃんはまず、保険適応を目指した。


 医療用マシンメトリィを使う患者様は重篤な病気が殆どで、致命的な段階にあることが多い。

 体が保たない状況にある患者様の魂をマシンメトリィに仮インストールしておき、状況によってはそのままマシンメトリィを買取って頂く場合もある。

 そのための保険適応だった。

 その状況については推して知るべし。


 ことこのマシンメトリィに仮インストールするための同意書は手術のものとは別に書かなければならない。

 姉ちゃんはこの点についても危惧していた。

「ただでさえ不安な上、得体の知れないものにまでサインとなれば不安は爆発するだろうになんで別に書かせてんの?」

 などと院長様を小一時間追い詰めていた。

「それは私の一存ではない」

 という院長様の表情は硬く

「正直言えばキミはただの小娘だ。

その話を逐一聞いていてはキリがない」


 そう言われることも折り込み済みだった姉ちゃんは自分の元素マシンメトリィを連れて建物をあとにした。


「タケルいくよ。現場に言ってもやっぱり意味はない」


 もしかしたらということも考えていたのだろうが姉ちゃんは政府本拠地に向かうことにした。


「議事堂に入れる女の子っていないんじゃないかな」


 俺の一人ごとも耳には届かず、姉ちゃんはまっすぐ目的の部屋を目指した。


トントン


「失礼します」

 普通秘書官に中継ぎして貰って入れるような部屋に直接入る一般人。

 想像通りの豪華な部屋に一人だけ初老の男性が座っている。


「キミか。マシンメトリィを作ったという女性は」


 正直あまりいい気のしない視線を男は姉ちゃんに向けた。


 それだけで俺は掴みかかりそうになる気が湧いたが、姉ちゃんにそれを制される。


「たしかに私は降って湧いたようなただの一般人です。

しかし、それとこれとは別です」


 姉ちゃんはこれから未曾有の危機が訪れると言った。


 それによって世界人口の約三割ほどが減少すると見られています。


 それを隣に立っていた元素マシンメトリィが表にして表す。

_ホワイトボードなんだ。

 全然最新の技術っぽくなかった。

「それには必ずマシンメトリィの技術が必要になります」

 難しいところはホワイトボードに、

 語りは姉ちゃんがという形で話は進んでいった。


 大臣もご承知の通り我々の体には遺伝子というものが刻まれています。


 それは人間のみならず全ての生き物を形作るのに必要な膨大な量の情報を書き込まれているとお考え下さい。


 それによってどの生き物のどんな形になるかが変わってくるのです。

「その話はまだかかりそうかね?」


 恐らくこの後もまだ色々とやることが多いのだろう「大臣」は姉ちゃんの話を遮った。


「大臣」はそんないつあるとも知れぬ話には付き合えないと姉ちゃんの話を一蹴して部屋を出ようとする。


「お待ち下さい」

 そこを遮ったのはマシンメトリィ。


 人間のSPがマシンメトリィを抑えようと数人がかりで跳びかかるもあしらわれ、「大臣」を引き止めることに成功した。


「私は博士の言うことを証明できます。

故にあなた方に危害を加えることはしません」

 マシンメトリィに覆い被されたままの「大臣」は

「では私に何をしろと?」


 簡単なことです。

 あなたには発表してもらいます。

 人類滅亡の危機を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る