第6話 母の夢
新たに出来た母の夢は女の子を産むことだった。一度の妊娠で女の子が生まれたわ。本来ならそれで終わりだった。ところが私の姉の由佳は母の目を離したすきに車道に飛び出してしまい亡くなってしまった。
享年3歳の短い命だった。母はその時、春彦兄さんと夏彦兄さんが喧嘩しているのを止めるのに神経を集中してて姉がいなくなったことには気付かなかった。
「ママ。助けて」という悲鳴に母が気がついて後ろを向いた時、姉は車にひかれた所だった。
母はその瞬間が頭から離れなくなり、自分を責め寝込んでしまった。それから姉の幻覚を見るようになった。姉はいつも母の前に現れては「ママ。私、妹が欲しいの」といったそうよ。それで母はみんなの反対を押し切ってまで出産した。
しかし、今度は神も母を見捨てたらしく生まれた私は男だった。もう母の体は文字通りぼろぼろでこれ以上生むのは不可能だった。
諦めることが、できない母は他の三人は父似の顔をしているのに、一人だけ母似の私を見て女として育てることを思いついたらしいわ。
私を取り上げた産婦人科の医者は母の母(つまり祖母)から母は説得にかかった。祖母も最初は反対をして逆に説得をしてやめさせようと、したらしいけど、母も粘った。
祖母は代理母とかを薦めたらしいけど、母は納得しなかった。自分が産まないと意味がないというのが母の考えであり、認めてくれないならもう一人生んでやると脅したらしい。
祖母ももう少し頑張ってくれれば良かったんだけど、言い出したら頑固であとにひかない母の性格に負けて、最終的に祖母が、おりたの。
看護婦さんたちや役所に口止め料と称したお金をかなりつぎ込んで私は女として生きることになった。
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