第5話 母の憧れ

 これから何故女として生きていくことになったのか?について語るわね。長くなるけど、我慢して聞いてね。


 ことの元凶でもある私の母は生まれつき身体が弱かった。そのせいか周囲のものは母を甘やかしてしまい、知らず知らずのうちに母はわがままに育った。


 何しろ母の座右のざゆう の めいは『この世に叶わないものなど何もない』だったからね。


 事実、凄いことは、父と母は幼馴染みで、母は幼少期から父と結婚すると自分の中で勝手に決めてたし、その目的の為ならかなり無茶をしても叶えた。


 今でこそ大企業と揺るぎえない地位を確保している父の会社だけど、祖父の代に多額の負債を抱えて、倒産しかけたことがあり、それを助けたのが母の実家。


 ただ条件があり、それが母との結婚。結婚すれば負債を補うし、多額の融資もすると父に持ちかけた。父も当事付き合っている彼女(今の後妻さん)がいたのに、その条件をのんだ。


 生前の母方の祖父に言わせると、生まれつき病を抱えている娘が不憫で、せめて人並みに幸せな家庭を築かせてあげたかったんだって。


 裏にそういう理由わけのある結婚生活ってどうなのって思うけど、夢見る少女の母は幸せだったみたいだわ。



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