第9話 外出 最大の目的編2

 今、下宿のアパートの前にいる。女の子を下宿に連れ込んであれやこれやする。何度妄想したことか。結局一度も実現しなかったし、すでに何度も心を折られている。 そんなことはもう一生ないだろうと諦めていた。だが、今はとなりにジェンヌがいる。別にあれやこれやするためじゃないし、どんなに好意をよせられても、慣れてないからどうしたら喜んでくれるかわからないし、もし嫌われたらと思うと恐怖が走る。


 さて、無表情を装いジェンヌに声を掛ける。

「汚いところですが、どうぞ、お入りください」

「これが、私たちの愛の巣なのですね」

そういうの違うから。

 しかし、これから、実は大変お願いしにくいことを言わなければならない。


 なんて、言おうかな。とりあえず梵字変換(神語モード)を起動して、今朝預かった騎士服と鎧を異空間から取り出す。

 異世界の空間収納はほんとに便利、霊力でも使えてよかった。

 

「俺はこれから、冷蔵庫とか、食品庫と見て整理しているから、そっちの部屋で騎士服と鎧に着替えてください。」

「な、なんで、結構この服、気に入ってたみたいなのに?」

理由なんて言えるわけがない。「どうしても」と言って、騎士服と鎧を持たせて部屋に押し込む。


 そして、俺は台所で、冷蔵庫を開け食品をチェックした。牛乳と冷凍ピラフとあとは、3連プリンぐらいか。昼に食ってしまえば、あとは大丈夫だな。

 あと、食品庫のカップラーメンは異空間に収納しておこう。


 ジェンヌが着替えて部屋から出てきた。

「これから、恥ずかしいことが起こると思うけど、俺を信じてくれ。俺は向こうを向いているから、それから、俺の指示にしたがってくれ」

「え、なになに?」

 俺は無視して、梵字変換(神語モード)を起動する。


「   収納!!   」


 いきなり、騎士服と鎧が消えました。


「きゃー(・・・)」棒読み

 いきなり、背中から抱きつかれた。

「あ、あの……」

「は(・)、はずかしい(・・・・・)。こっち(・・・)を(・)みないで(・・・・)」

 いま、ジェンヌはたぶん下着姿だ。いや、おれの妄想がイメージに反映していれば、すっぱだかもありうる。


「ふふ、興奮しています。私だってそれなりの知識はあるのです。パーティでガールズトークしているし、メンバーのひとりの○○はサキュバスだしね。彼女から伝授された「男性を魅了する法その1からその3の巻」までは免許皆伝です。たしかその1は「脱ぐべし」その2が「抱きつくべし」その3が「恥ずかしがるべし」のはず。この3連コンボわざではさすがにアキトも耐え切れないはず。」 

 ジェンヌさん。こころの声が漏れてますよ。巻って一言だし。それ少年院でアイパッチしたおっさんから受け取ってませんか。


 さすがに、このままでは理性が飛んでしまう。引きはがそうとするが、その場を中心にぐるぐるまわるだけだ。こ、これは、絶対真理「自分の背中は自分では見れない。」が絶賛発動中です。しかたない。


「   蒸着!!!!   」


 そうです、ただそれだけがやりたかったのです。期待された方ごめんなさい。


 亜空間での戦闘となれば、戦闘服は瞬着する必要がある。梵字としては、「蒸着」と「燃結」で迷っていたが、思わず子供のころよく練習してた方がとっさにでてしまった。


 仕方ない、メインの戦闘スタイルの方で、「燃結」を使うことにした。ジェンヌに今度はセーラ服に着替えてもらって。


「   焼結!!!  」


 鎧だけが装着され、セーラ服アーマモードが出来上がりました。上出来 上出来。


 ジェンヌにジト目でみられたが、今日のミッションはほぼコンプリートされた。

 ご協力ありがとうございました。


 お礼に、ジェンヌに冷凍ピラフとカフェオーレを作ってご馳走した。

 ジェンヌはおいしさに目を丸くして、すぐに機嫌を直してくれた。特に「プリンは私たちの世界では見たこともないデザートです。」といって3つとも食べてしまった。それ製法からいって本当はプリンもどきだから。俺も好きだけど。

 ひょっとして胃袋をつかんでしまったか?


 さて、いっぷくしてから、デパートに買い物にいくことにした。

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