第2話 拉致?親玉は美人秘書

 次に気が付いたのは、車の中で後部座席の真ん中におれがいて、運転手と両側にはリクルートスーツのイケメンのお兄さんと、助手席には駅で声を掛けてきた可愛らしいお姉さんが座っていた。


 車は、荘厳な寺院仏閣?風な建物が建つ広大な敷地の中に入っていった。


 門には、新興宗教の教団の名前が書かれていた。横のイケメンさんに尋ねてみると、今は、大体午後7時くらいで、アプリを立ち上げた人をこの施設にお連れするよう教団の秘書室長に指示されていたらしい。ちなみにこのイケメンさんとラブリーなお姉さんは宗教の勧誘員さんらしい。顔といい、服装といい納得である。


 ただ、下手すれば勧誘からの誘拐・監禁・洗脳のフルコースだぞ。もっとも、俺は新たな記憶と、親もとを離れて高校に通っている一人暮らしだから特に問題はないけど。


 一番奥まった施設の前に車が止まり、降りるように促され、施設中に入っていく。


 こういう施設は大体キンキラキンか質素清潔のどちらかだと思うが、この施設はうまく融合しており、好感が持てる、うん。その長い廊下を歩きながら、俺は、先ほどロードされた記憶について考えている。


 どうやら、俺は陰陽師の生まれ変わりらしい。それも、時代の節目に安倍晴明や役小角やさらに大昔、神代時代に勃発した神々の戦争に参加して戦果を挙げまくった陰陽師として何度も生まれ変わっているらしい。また、引き継ぐ力はその時代時代の霊界レベルに合わせて顕現するらしいが、今回は、神代時代とほぼ等しい力を持って転生したらしい。この平和な日本でなぜに?


 立ち止まったため、思考が止まった。


 廊下の突き当りが目的の部屋らしい。

 扉をイケメンがノックすると中から「どうぞ」と声が返ってきた。

 イケメンが扉を開け、中に入るように促す。


 俺って何気にVIP待遇だな。それでは遠慮なしにと中にはいると、中にはリクルート集団が壁沿いに整列し、部屋の中心には、八方陣(風水なんかでよく見る形だが、中にかかれているのは記号だか、文字だか、模様だかさっぱりわからない。)が描かれ、各頂点ごとに巫女の恰好をした妙齢の女の子たちが取り囲み、手をかざして何か気のようなものを八方陣に送り込んでいる。気とかオーラとかが見えるのは、前世の記憶を取り戻してステータス(笑)があがったためだろうとひとり納得していると隣の女性に話しかけられた。


 そちらのほうを向けば、25、6歳の年頃で10人に問えば10人が美人と答えるほど整った顔立ちでつややかな黒髪を腰のあたりまで伸ばした女性が微笑んでいた。


 「私はショウコと申します。この教団の秘書室長をしております。このたびは私の求めに応じてここまで来ていただいてありがとうございます。」


 スタイルのいい美人さんが秘書モード武装しているので無駄にエロいが、醸し出す雰囲気は、恐れ多いほど高貴であり、思わず身震いするほどである。返事も自然と敬語口調になっている。



「いえ、どういたしまして。それよりもどういったご用件でおよびになったのでしょうか?」


「まずは経緯を、あなたがダウンロードしたアプリを開発したのは私です。」


「あのアプリの目的は?」


「あのアプリは陰陽師の末裔であれば、思わすダウンロードするように意識操作するようになっています。また、ダウンロードすれば自分が何者であるか理解し、起動すれば、陰陽師の力を使うことができます。また、ダウンロードした場所をGPSで把握できるようにしています。」


「陰陽師の力?」来た来た、陰陽師の力を使って俺に何かさせることがこの教団の目的か。

 俺に奇跡を起こせと!とかいうのか。あれ、いまの説明どこか引っかかりがなかったか。


 しかし、美人秘書さんは、アプリの使い方を説明し始めた。今気が付いたがアプリ名は「梵字変換(神語モード)」となっている。


「神は、古(いにしえ)の昔、人族に言霊という能力を授けました。この能力は、霊力を乗せて言葉(ことのは)として発すると、事象が具現化し、文字にすることで具現化が固定され、現世の事象として成すことができるのです。」


ふむふむ聴いたことがあるような?啓発本ではよく書かれている根拠のない甘い言葉だ。

強く念じ言葉にしても、書き出しても宝くじは当たったためしがない。


「しかし、神は言葉(ことのは)を持ちません。1を見て万事を知る能力に言葉は必要ありません。だから、神の言葉はレや○や+の記号なのです。これを言葉に変換したものが梵字なのです。梵字で発し、文字にしなければ現世に成すことはできません。


 このアプリに言葉(ことのは)を打ち込み、エンターキーを押せば、霊力による呪符を打ち出し、事象を成すのです。あなたはその血に宿る力で桁違いの霊力を集め取り込むことができるのです。」


「霊力とは?」


「事象を起こす未知のエネルギーです。ちなみにこのエネルギーは電気エネルギーにも変換されますので、スマホの充電はもう必要ありませんよ。」


霊力とはすべてのエネルギーの大本になる未知のエネルギーと思っておけばいいか。

物理学者でないのでよくわからん。ただ、未知エネルギー→位置エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギーや熱エネルギーのエネルギー変換をすっ飛ばして未知エネルギー→電気や熱、炎を起こせるということか。魔法だねこりゃ、しかもMPは無限らしい。俺チートだわ。


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