第64話 ウフフな計画と思わぬ障害
第4試合でリリア達が使ったのは
その辺の作戦は理解できる。奥の手は見せたくない。それでもマリアンネ様達以外のパーティは余裕で勝てるだろうし。
「これからどうします?」
「練習しますわ。同じ魔法でも何回も使えば明日までに少しは効率も良くなるでしょうから」
「私もそうします」
リリアとナタリアは迷わずこたえる。
「手伝うにゃ」
「私も」
「付き合おう」
結局殿下までくっついて第2演習場へ向かうことになった。疲れてハアハアしている美少女達を独占したかったのだが仕方ない。それに私1人でハアハアしている3人を背負って歩くには無理だ。
何故3人が倒れるの前提か。それは倒れるように私が誘導するからだ。
『魔力は一度完全に使い切ると、回復した際にすこしだけ強くなりますわ』
そんな台詞で。
この事実を知ったリリアとナタリアは限界まで魔力を使い切り気絶寸前状態になるだろう。手伝うリュネットやナージャも結果的に同様だ。そうすれば全員お持ち帰りしてハアハア出来る。やったね私、そういう理論だ。
殿下をあえて追い払わないのも理由がある。ハアハア状態の美少女お持ち帰り、まあ実際は寮の入口まで運ぶだけだけれど、この作業を殿下にも手伝わせるつもりだからだ。
そうすれば私が楽というだけではない。殿下もハアハア状態の皆様に魅力を感じて情が移って……
勿論殿下にはリュネットを担当して頂く。何せ本来は結び付く運命、相性はいい筈だ。上手く行けば私も妃候補から脱出できる。こういうのは日ごろの積み重ねが肝心なのだ。
第二演習場に近づいたところで皆さん気付く。
「第三演習場に変えようか」
殿下も察知済みだ。何を察知したかと言うと覚えのある魔力と魔法の反応。つまりは……
「マリアンネ様とアニー様にゃ」
ナージャがそう言うという事は、当然ほかの全員も分かっているという事だ。つまりマリアンネ様達も私達と同じ事を考えたという事の模様。
「本当はかまわないですわ、と言いたいところなのです。でもやはり第三演習場に致しましょう」
リリアの台詞。確かにその通りだな。そう思って第三演習場方向へ向かいかけた時だった。
「アンフィ―サ君、やっと捕まえた」
聞き覚えのある声。誰かはすぐわかった。だが魔力反応は感じなかった筈だ。それどころか気配すら感じなかった。いきなり出現した、そんな感じだ。
「サクラエ教官、どうなさいました?」
動揺を押し隠しつつ表面はにこやかにそう尋ねる。
「さっきの手紙に書いて置いた通り、これから研究発表の質疑応答だ。アンフィ―サ君にも出席して貰う」
えいちょっとおま、待ってくれ!
「研究発表は午前中に終わられた筈ですよね」
やはり動揺を何とか押し殺しつつそう尋ねる。
「かなり多くの聴者から独立して充分な質疑応答の時間をとって欲しいとの要望があった。御前試合第一部の作業があるので午後3時からという事にして貰った」
どうやら強制参加させるつもりの模様だ。少し抵抗してみよう。
「教官でしたら私以上に完全に質疑応答にもこたえていただけると思いますけれど」
私は必要ないだろ、だから釈放してくれ。そういう意味だ。
「無論、質問には基本的に私が答える。だが私が答えられない質問もあるかもしれない。考案者から見て間違った回答をするかもしれない。
それにこの『手順込み魔法の構造化手法』及び『手順込み魔法の構造図示』についてはアンフィ―サ君が本来の考案者であり功績者だ。そこを聴衆にはっきりさせる必要もある。だから当然アンフィ―サ君は参加する義務と責任がある」
実力行使で逃げるか、とっさにそう考える。でもサクラエ教官相手に逃げ切れるヴィジョンが思い浮かばない。何せ単独で迷宮の第50階層付近まで行ける強者だ。
せめて気になった事だけ、一応聞いておこう。
「それにしても教官がいらっしゃったのに全く気づきませんでした」
魔力も感じなかったしそもそも気配すら全く無かった気がする。
「魔力を完全遮断した後気配を完全に消した。
「それって何か魔法ですか」
「ごくごく基本的な技術だ。誰でも覚えられる」
いや、そんなの
本当は教官のステータスを全て確認したいところだ。でも怖くて出来ない。何せサクラエ教官だ。どんな方法でかはわからないが気付かれる恐れすらある。
いずれにせよ逆らうのも逃げるのは不可能だ。詰んだ。終わった。
「ではアンフィ―サ君を借りていくぞ」
ああ私のハーレムが……遠のいていく……
◇◇◇
夜の鐘すら鳴りやんだ時刻、つまりは8の鐘以降。夜が早く朝も早いこの世界では深夜といってもいい時刻に私はやっと解放された。
まず質問者や聴衆がヤバかった。学生にとっては指導して頂く立場である教官だの主任研究員だのといった連中がここでは最底辺。魔法大会の他の発表とはまるで緊張感が違う。
王立魔法研究所所長で現役公爵なんて奴までいる。それどころかなんと陛下及び王妃御自身まで御臨席だ。そう言えば今の王妃は魔法研究者だった。それに気づいてももうどうしようもない。
「皆さん大変お待たせした。それでは質疑応答の時間にしよう。なおこちらはここの高等部生徒のアンフィーサ君だ。先程の発表でも言った通り、今回の理論の提唱者で、私はあくまでアンフィーサ君の理論を体系づけただけになる」
何だその紹介は。やめてくれ。これ以上注目されたくないのに。しかも注目されたくない人物同率第1位である両陛下もいるのに。
「王立魔法研究所研究所主任のハマハラです。それでは質問を致します……」
質問も苛烈を極めた。そしてサクラエ教官、ガンガンと私にふりやがる。おい、『基本的に私が答える』と言った筈だろう。そう言いたいが言えない。力関係と周囲から感じる無言の圧力で。
おかげで準備もしていないのに手順込み魔法の将来性や起こる可能性のある問題点についての講演までさせられてしまった。まあ20世紀後半の『ソフトウェア危機』についてのパクリだけれども。
本当は皆と楽しくウフフして、お風呂入って、ご飯を食べて、夜はリリアとナージャと3Pするつもりだった。それが全部パアだ。もうそんな気力ない。食事食べる気力すら無い。
ずるずると女子寮の自室へ。
「オルネット、あとは宜しく」
私専属のメイドにそう言って私は倒れる。私、ばたんきゅ~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます