第62話 新たなターゲット?
私としては非常にマリアンネ様とアニーに申し訳ない。それでもネタを明かすわけにはいかない。明かしたところで信じてもらえないだろうけれども。
「元々御前試合に出たのもアンフィ―サ様が今度の御前試合に出られるらしいとお聞きしたからです。これだけは超級魔法を使える私に勝ち目があるかと思いましたので。ご存知の通り超級魔法ほとんど血族遺伝です。ですから本来は文官家系であるアンフィ―サ様には使えない筈ですから。
でもまさかリリア様を出されるとは、しかも超級魔法を完全に使いこなされていらっしゃるとは思いませんでした。姑息な考えはやはり通用しないようですわ」
うーむ。確かにそう考えると私のやる事って、いちいちマリアンネ様の気にさわる方向だ。決して意図した訳ではないのだが。申し訳なさが一層強まる。御前試合出場は私のせいではなく陛下やサクラエ教官の陰謀だけれども。
それにしても私は今、全く別の事が気になる。マリアンネ様、さっきから一方的に喋っているのに、何故かカツ丼も親子丼も着実に減っているのだ。どうやって食べているのだろう。観察してもよくわからない。別に他の人がこっそり食べている訳でもない。何かこういう特技でもあるのだろうか。
さて、色々気になることはあるけれど一つ聞いておこう。
「マリアンネ様、一つ質問をして宜しいでしょうか」
「勿論ですわ。何なりとどうぞ」
よし、それでは聞いてみよう。
「超級魔法をあそこまでコントロールするにはかなりの魔力と訓練が必要な筈です。学校やクーザニ
「確かにクーザニ
なるほど。こちらと同じ事をやっていた訳か。
「2人では大変だったでしょう」
「でもその分レベルも上がりやすいですわ。カーワモトに戻った後は訓練場所に困るでしょうから、夏の間みっちり続けさせていただきました。実際はサクラエ教官にクーザニ
サクラエ教官、マリアンネ様達にも手を貸していたのか。そう言えば論文を読んだとも言っていたし。ひょっとして御前試合、リリア達とマリアンネ様達がぶつかるのもあらかじめ教官が描いたシナリオだったりするのだろうか。奴ならやりかねない。
「クーザニ
リリアが尋ねる。確かにそうだ。私はブリーチャーを使えるから問題ないけれど、あの魔法は私のオリジナルだ。マリアンネ様達はどうやっているのだろう。
「クーザニ
なるほど、その手があったか。でもそれをずるいとは私は思わない。むしろ使えるものは使い、使った事を堂々と明らかにするマリアンネ様にいさぎよさを感じる。
「さて、あと
そう言ってマリアンネ様とアニーが立ち上がった時だった。
「明日ももし宜しければお昼をご一緒致しませんか。明日もまた今日とは違うまだ珍しい料理を用意させていただく予定ですので」
おいリリア何を言うのだ。そう思いつつ回りをさっと観察すると、
○ 殿下、マリアンネ様、アニーは驚いた、意表をつかれたという反応
○ リュネット、ナタリアはやっぱりという雰囲気
○ ナージャは反応なし。いや自分の飯が減ると思っているかもしれない。
という状態だ。
「宜しいのでしょうか。間違いなく私達は御前試合では敵だと思いますわ」
「それでも学園の現状に満足しないで
なるほど、そういう事か。さてそれならマリアンネ様はどう出るだろうか。
「そうですね。私も皆さんにまだまだお聞きしたい事や話したい事があるような気が致しますわ。それでは明日もこの場所、この時間で宜しいでしょうか」
「ええ、お待ちしていますわ」
うーむ。こうなってしまったか。でもリリアの意向なら仕方無い。
「それでは今度こそ、失礼させていただきます」
マリアンネ様達は優雅に一礼して、そしてこの場所を後にする。
「それではこちらも開会式の準備を致しましょうか」
テーブルを片づけ、服装を整えて……
◇◇◇
陛下が出てきての開会式の後、また控室に戻ってくる。
「あの陛下の『より実戦的で効果的な魔法の試合を期待する』っていうの、明らかに今までの呪文の華麗さだけ重視する傾向への批判だよね」
「間違いなくそうだな。だからこそアンに大会を引っ掻きまわせとお願いした訳だ」
今回は殿下も主催者側ではない。だから堂々とこの控室にやってきている。正直他のチームからの視線が痛いが私やリリアのせいじゃない。
でもリリアに害を及ぼさない為にも結局私が殿下を引き入れた事にしないとまずいのだろう。ああ積み重なっていく既成事実が悲しい。
「サクラエ教官もその意をくんでいるのでしょうね」
「そうですね。マリアンネ様を出場させたのも同じだと思いますわ」
ん? 微妙にリリアの台詞に引っかかる。
「マリアンネ様は私が出るという話を聞いて、とおっしゃっていたのですけれど」
「その話を流したのはきっとサクラエ教官ですわ。そう話せばマリアンネ様がどう動くかお分かりになっているのだと思います。マリアンネ様はアンが大好きですから」
おいリリア! 今なんと恐ろしい事を言ったのだ。
「私もそう感じたのにゃ。どう見てもマリアンネ様はアンの事が大好きだにゃ」
「だよね。私もそう感じた」
「言われてみればそうですね」
おい待てナージャにリュネットにナタリア。
「そうか。それで以前のような
かつては間違いなくマリアンネ様のターゲットだったエンリコ殿下が頷く。
待ってくれ、そんなの勘弁してくれ。私はスポ根的な熱さは苦手だ!
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