第41話 魔銃試射
いよいよ護身用連装銃を試す。
むろん最初から敵に向かって試すなんてのは無謀だ。だから最初の標的は
「それがアンが作っていたという新しい魔法用の道具か。魔法杖としては随分と太くて重そうだ」
エンリコ殿下がそんな感想を述べる。杖ではなく10ミリ銃身7本分、ごついのは当然だ。
「それでは試してみますわ」
まずは|弱装モード(威力が弱い)の単射で試してみる。
『弱射!』
弾が発射され奥の壁の一部を抉った。成功だ。なお壁は
「今のが魔法でしょうか。水と風の魔力を感じましたけれど」
「他に火と金の魔力も感じたよ。どの魔力もかなり弱いけれど」
「魔力としてはとても攻撃魔法とは思えない程度だ。でも威力は確かだな。
流石皆さんよく見ている。まさにその通りだ。さて、次は最大威力で挑戦。
『強斉射!』
残った6発の弾が強装モードで発射される。やはり反動は無い。音も風魔法で殺されている。だが今度はさっきと比べものにならない。
「あんな大穴があいたにゃ」
「
「凄いです。あの威力なら相当な敵でも倒せます」
勿論
「使用した魔力は各属性混ざっている気がする。でも魔力そのものはやはり通常の攻撃魔法より小さい。あと攻撃の属性そのものは魔法ではない気がする。普通の剣や槍と同じく魔法属性なしのようだ」
殿下め、よく観察していやがる。その通りだ。この世界に物理という事は無い。でも強いて言うならこの魔銃は物理属性。魔法防御なんかされても関係なく敵を穿つ。
さて、弾が無くなったら次弾装填だ。
『
銃後部の蓋が開いてポケットに入っていた弾が7発補充される。これなら手動装填よりも数段早い。連射とまではいかないけれどもかなり有効だろう。
ちなみに今、ポケットには70発、自在袋に700発の弾が入っている。自在袋の中から直接装填は出来ないのである都度はポケットに入れておく必要がある。でも弾は重い。私の服のポケットだとこれが限度。
今度は専用の弾箱でも作っておこう。早くも改良点を思いついた。いい傾向だ。
「この魔法は他の人、例えば僕でも使えるのか?」
エンリコ殿下がアウトな事を聞いてきた。
「ごめんなさい。これは私専用の魔法なのですわ」
正確には『魔銃の使い方と専用魔法を知っている私専用の魔法』だ。つまり使い方と専用魔法を知っていれば私ではなくても使える。でも知っているのは私だけだし他に教えるつもりもない。こんなの量産されたら大問題だ。
「そうなのか、残念だ」
殿下、本当に残念という表情だ。
「仕方ないよ。本当は私も使えたら少しは戦闘に貢献できるのだろうけれど、アンの開発した専用魔法だし」
リュネットには申し訳ない。でもリュネットは回復に専念して欲しい。リュネットの存在が事実上このパーティの生命線なのだ。確かにナージャと殿下がいればある程度は力押しも出来るけれど。
「それでは行きましょうか」
「そうだな」
今日は第15階層から最短ルートで第20階層ボスまで攻略する予定。殿下が参入してから攻略がとんでもなく順調なのだ。
確かに殿下、このパーティの弱点を補強するのに最適なのは間違いない。剣技もかなり出来る上、他の面々とあわせて攻撃魔法主体なんて事も出来る。更にリュネットが教えたおかげで体力回復魔法まで使いこなしやがる。つまり万能キャラだ。RPGで言えば勇者並の性能。
でも私個人としては認めたくない。このパーティは私のハーレムパーティだったのだ。なのに何故男が……なまじ権力関係で切れないだけでなく、実際に有用というところがまた癇にさわる。でも言えない。特別権力関係のせいで。
『三連射!』
悔しいので出てきたオーク2頭を魔銃で瞬殺させて貰う。頭が吹っ飛んだオークの死骸がばったりと後方へ倒れた。
「早すぎるにゃ」
「出てきてすぐだよね」
「オークはそれなりに強いので、念の為ですわ」
まさか鬱憤晴らしとは言えない。
「でもこのくらいの層はいいよね。魔石以外もお金になるから実入りがいいし」
リュネットの明るい声。
確かにオークは肉が食べられるし皮も素材になる。つまりゴブリンやコボルトあたりと比べると段違いにお金になる訳だ。この事は魔砲少女ユニットのせいで金欠気味の私にとっても大変ありがたい。
自在袋にオーク2頭をそのまま収納。解体は全員苦手なのでこのままギルドへ持ち込む予定だ。
「さて、一気に第20階層ボスまで行きましょう」
オーク程度の大物は鬱憤晴らしモードで、小物は殿下やナージャの剣で瞬殺しながらガンガン進む。
そしてついに第20階層ボス部屋前。
第15階層ボス部屋の先から入って、ここまで倒した魔物はオークだけでも30頭以上。ゴブリンの類いはもう魔石とるのもいいかな位。結局は全部魔石を取ったけれども。この
とりあえずリュネットが全員に体力回復と清拭魔法をかけた後尋ねる。
「魔力は全員大丈夫かな。ぎりぎりまで回復させるよ」
これだけでも普通のパーティに比べると大分恵まれている。
「こうやって常に体力や魔力に余裕が持てるのはリュネットのおかげだな」
「私はこれしか出来ないからね」
「これだけでも充分以上ですわ」
うんうん、私も大きく頷く。でもついでだからお願いしよう。
「ごめんなさい。7割は残っているのですけれど軽くお願いしていいでしょうか」
「大丈夫だよ。それにアンは先頭だしここまで出た大物をほとんど倒しているしね」
ふっと魔力が戻るのを感じる。これは本当にありがたい。普通のパーティならここでポーションを馬鹿にならない金額分消費するところだ。
「本当に恵まれていますよね。リュネットがいるおかげで余力を残すとか気にしなくて済みますから」
これは本音だが殿下に聞かせる意味もある。だから殿下は私を気にせずリュネットとくっついて欲しい。お願いだ。いや本当はリュネットも私のハーレムに入れて一緒に諸国漫遊をしたいところだが涙を飲んで引き下がってやる。だから私には関与しないでくれ。陛下らにもそう言ってくれ。頼むから。
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