第7話 魔女の娘、村娘セレネとの再会3

新しい俺のニーマン、よろしくなコルビン。

四匹目のニーマンは小人を奪って操ることが出来る能力か、

敵一体を味方に出来るなんて面白い、

しかも 操ってしまえばこうやって乗り移った小人を無力化することもできる。


さてどうやって感謝されるかだけど セレネちゃんには俺とコルビンとのお芝居を

見てもらう事にしよう。緊張するなぁ~。

俺は口下手で引っ込み思案な男なんだぜ。


コルビン! 今からお芝居をしてもらうぞ。


セレネの前で小人と殴り合えるほどの筋力は俺にはないし そもそも

仲間のコルビンをあまり殴りたくない

まずは そのこん棒で俺とセレネに殴り掛かるんだ。

と心の中で話すとコルビンはうなずいた。


コルビンの最初の体はボロボロだったけど

今の小人は新しいボディーで強そうだな!いいぞ~

よし やってくれ!!

コルビンがこん棒を振り下ろす。


「ドッカン!」

俺はタイミングよくセレネに振り下ろされたこん棒を払い除けた。

払い除けた腕がしびれる・・ やっぱり小人はすごいや。


「大丈夫かセレネ? ちっきしょ~ なんて力だ!」

「何やってるのよ。小人とこん棒で殴り合えるわけないじゃない?殺されたいの?」

セレネはピクピクとイモムシのように動こうとしているけど 

体が麻痺しているというか力を吸い取られてしまったかのように動けないようだ。


「任せとけって、秘密にしていたけど俺は強いんだ。おりゃ!!」

こん棒をコルビンに押し当てて倒れこむと 

もつれるようになってそのまま茂みに姿を隠した。

ここからじゃ セレネには見えないはずだ。

これで 俺の無様な剣術は披露しなくてよくなったな。


「見せてやろうじゃないか。 ギガクラッシュ!!どうだ!」

茂みの向こうにいるセレネに向かってセリフをしゃべり 

こん棒を地面に叩きつけて音を出す。

石にこん棒を叩きつけると 実際にこん棒を打ち付け合ったときよりも

ずっといい音が出て強そうに聞こえることを発見した。


コンコン コンコンと石に打ち付ける。


「やるじゃないか?強いな!お前はどうやらほかの小人とは強さが違うようだな。

だけどな、セレネさんだけは おれの命に代えても守るんだ!!。うりゃ!」


ああ ヨーゼンもいたな 忘れてた。まあいいか

コンコン コンコン


「なに!こん棒を奪われた。二刀流だと、そんな手があったのか?

まずい!まずいぞ! せ・・せめて 二人から離れないと・・

俺が時間を稼がないと!」

 

「きゃーー!きゃーー!」とセルネは叫んでいる。

おいおい 俺が死ぬと思ってるだろ? 

強いっていったのに信じてないようだな。


「こうなったら あの技を試してみるしかない!

セレネ!!今から俺は修行では一度も成功したことのない捨て身の技をやる。

どうかセレネだけでも生きて幸せになってくれよ!頼んだぞ!!」


「きゃーー!逃げて!」


「これが最後だ!必殺のデンジャラスパンチ!」

「コン!」とこん棒を石に打つ付けた。


よしコルビン そろそろ消えてもいいぞ。

色々とやりすぎちゃったかな?

でも コーヒーに変わる飲み物を見つけたら一杯おごってあげれば 許してくれるだろう。。


どうしたんだ? コルビン

でも コルビンは消えてくれなかった。

出てこいよ。その小人の残骸はドームに回収すればいいだろ?


「オレ ツヨイ マダ 勝負おわってなイ」

「なにぃぃい!! ボカン!!!!!」

こん棒で めちゃめちゃ殴られた・・意識が・・飛んでいく・・。

コルビンってそういう性格なのか・・・・・。


「確りするでちゅー・・

・・・。

「確り 確りして! オーレンス!!!」

「はぁ!」


なんだ 俺は気絶していたのか?

それにしても 頭が柔らかい・・水の上にいるみたいだ。

目を開けると俺は セレネに膝枕されていた。

生足って柔らかいんだな~タンコブがぶつかっても痛くないや。

俺が気が付いたことにセレネも安心したようだ。

潤んだ瞳は笑顔に変わった。

それからニタニタとし始めて好奇心に満ちた顔になった。

ああ そうだった。俺は戦えないと思われていたのに小人を倒したすごいヤツだったな。


「それにしても どうやって小人を倒したの?小人の姿もないようだけど??」

そうだ。コルビンはどこへ行ったんだろう?

周辺にはいないようだけど野生に帰ったのか?コルビ~ン!!

ドームの中か?ドームの中に意識を向けるとコルビンがいることはわかった。

「ドームの中の ログハウス 気に入っタゾ ガハハハ」

俺を倒した後にドームの中へ戻っていたのか、さてセレネにはなんて言い訳しようかな。

いいや。。


「実は さっきの戦いはウソなんだ。ビックリさせてしまってごめんなさい」


セルネは惚れた男を見たかのように目をうっとりさせていた。

多分 口元も微笑んでいたのだと思うけど、大きな胸が邪魔で口までは見ることが出来なかった。

「ええ ウソのようなビックリする戦いだったわね!でも まずはヨーゼンを運びましょ」

通じてない。それよりセレネの言う通りだ。ヨーゼン ごめ~ん 忘れてたわ・・。

「確りするでチュよ」


その後は セレネが「ウォーターバルーン」を唱えてボールにヨーゼンを乗せた。

この戦士風のヨーゼンという男は戦士かと思っていたのに。

「え?? 羊飼いよ! 見たらわかるじゃない?」

と言うから信じられない、羊飼いと言えばきゃしゃな体付きに

犬を一匹連れているイメージだったけどヨーゼンはどう見ても西洋風の弁慶だろう?


羊飼いは羊を追いながら小人も倒さなきゃいけないの。

だから 「大検」や「おおオノ」を身につけて戦うのだと言うことだった。



「・・・・そうじゃなくて、あの小人は俺が操っていたんだ!」

「ええ そうね。まるで操っているみたいに戦えていたわ」


まるで らちが明かないので俺はドームを見せた。

「これを見てほしい」

ドームの中では ニーマンたちがぴょんぴょんと飛び跳ねたり手を振ったりして

愛嬌たっぷりな表情をセレネに見せていた。


「うわぁ~ 水晶の中に建物があるじゃない?なんて可愛いのかしら」


あれ?そっち? 女の子だからドームに目が行っちゃった??


「違うんだ。 ログハウスあたりをよく見てほしい」

セレネがドームに顔を近づけるとニーマンたちは 腰を振りながらダンスを踊り始めた。


「ええ 細工も細かくて素敵。きっと都で手に入れたんでしょ?私もいつか都に行ってみたいわ」

もしかして 見えてない?

「オーレンス。 ニーマンは術者が意識しない限りは見えないでチュよ」

そうなのか。


うわぁぁ くすぐったい!なんだ?

突然俺の背中をなでるように ブラシのようなものが突き上げた。

後ろを振り返ると ビックリしたことに でっかい顔のウサギがいた!!

「オーレンス 食べられちゃうゲロ・・」

「でも手綱が付けられていまチュね」


そして 聞き覚えのあるコソコソ声のような地声が聞こえてきた。

「オーレンスさん」

ん!! 右を見てもいない、左を見てもいない?

右、左、右、右!! いた!

「オーレンスさん、セレネも無事でよかった。

トカゲが発情期なのでウサギを集めるのに時間がかかりました。」とスニークが現れた。

どうやらこの世界では 馬の代わりに巨大なウサギとトカゲが使われているようだ。

そして戦えない村人を送り届けたスニークは トカゲをかき集めようと思ったのだけど

トカゲが発情期で集めることが出来ずに 数が少ないウサギを集めて助けに来てくれたらしい。

ヨーゼンはウサギに乗せ換えると気持ちよさそうに寝息を立て始めた。

動物と一緒にいる方が落ち着くようだ。


セレネに本当の事を話しそびれちゃったな・・・。


「さあ 荷物を探すわよ」

茂みに隠されたに持ちを探して動物たちに積んでいった。

そんなとき俺が草むらをかき分けると荷物じゃなくてツボがポツンと置かれていた。

「なあ セレネ、あのツボは荷物じゃないのか?」と聞いてみたけど

なぜか荷物に紛れていたツボらしくて、素焼きのツボなんてに邪魔になるだけだから捨ててもいいと言われた。

だけど サブロウがワクワクした感じに

「オーレンス、ツボの中身を見るでチュ」と促してくるので中身を覗くと

焦げ臭い匂いと中に黒い油のような塊が入っていた。

なーんだ。雨がツボにたまって腐った何かじゃないのか?

サブロウは所詮はネズミだな・・ 気持ち悪いものを見た気がした。


「食べたいゲロ」

「ソレ ご馳走」

「ドームの中に入れてほしいでチュ」

「ぶ~ん!」

コガネムシがドームの中に入ってしまった。セレネにこそ見られなかったけど

「えええ!」ってこんな腐った物が食べたいって?

ニーマンたちはどうしてしまったんだろう。

でも、でも、これも 飼い主の役目だと諦めてツボに手を突っ込んでみた。


「グチャ・・」うわぁ気持ち悪い。

腐った玉ねぎをはつかんでしまったような感触だった。


ブルブルと手が震えてきて恐る恐るドームに塊を入れると腐った玉ねぎはドームの中に吸い込まれると

、ドームの中にいるニーマンたちはムシャムシャと食べてしまった。

「ご馳走様ゲロ!」「美味しかったでチュ」「ビミ」「ぶ~~ん♪」

お前たちお腹壊すなよ。


「まさか ウサギが満載になるとは思いませんでした。では私は先に行きますので

セレネとオーレンスさんは残りの荷物をお願いします。

宴の準備もはじまっていますので帰ったらご馳走ですよ。 

今日は祝杯をあげましょう 

ちなみに私は酒癖がよくないので飲むのはやめてしまいました、、

オーレンスさんは私の分まで大いに飲んでください。

ではまた後程会いましょう!」

ああ スニークさの性格がなんか明るくなってるな。


無理やり乗れば乗れない事もなさそうだったけど ウサギも可哀そうだし 

セレネがなんと「歩きたい」と言って歩き出したので 小さな荷物をかついて俺も付いていくことにした。

セルネは後ろを振り返り、村娘らしい長い髪をかき上げてこちらを気遣ってきた。

「歩くペース 早くない?」と聞いてきたけど

今日はずっと歩きっぱなしで、さっきまでヘトヘトなはずだったのに

今はなぜだか体が軽いくらい。なぜだろう。

「大丈夫だよ」と言い返すとニッコリと笑って

「いいわー すごくいいわね!オーレンス

余裕があるでしょ?

そうだ!リングウェイトがまだあるのよ 使う?」と聞いてきた。


最初に会ったときにセレネがくれたあのイタズラリングだ。

「それそれ、それって何なんだい?」と聞くと知的な笑みを浮かべて

これはね、私の魔法をリングにして固定化したものだと言っていた。

でも問題はそこじゃない。なんでこんなものを作ったかだ。

「私が村にいないときに村の人たちのトレーニングに使ってもらおうと思ったの」

と言っていた。

つまり 体を動かすときに使う楽しくなれるものというのは 

トレーニング用のウエイトだった。

誤解は解けたけど もう どこをどう突っ込んだらいいのかわからないから

もう、いいやぁ~


村に近づいてくるとコガネムシの反応が増えてきたな。

小人に追いかけられて 荷物を捨てて逃げる人もいるだろうから拾い忘れたお宝が眠っていそうだ。

村に滞在している間にお金儲けをしておくか。

それにしても リングを付けているから息が切れてきた。

セレネも ホホを赤らめて、はぁはぁ言ってるけどペース早いんじゃないか?


「ここなら見えるわ。あれを見て!!」

セレネは夕暮れの光がライトのように照らす空を指さした。

ふあふあと ただよう白い何かが太陽の光を照り返している。

右も左も 太陽の沈む地平線のかなたまで輝いていた。

「奇麗だ・・」と口から自然に言葉が出てきた。

空に見とれているとさらに 七色に光るアホな顔の大きな鳥の群れが飛んでいく。

七色の渡り鳥か?

「レインボーアホー鳥ね。 こんなに沢山の群れが飛んでいくところを見られるなんて珍しいわ

あの鳥の卵には解毒作用があるの」とセレネは微笑む。

セレネってさ美人過ぎて個性がないけど、でもそれがいい!! すごくいいよな!!


「ホレちゃったゲロな?シクシク」

「オーレンスぅ~ オーレンチュ、ちゅーするでチュ」

「ガハハ 告白シロ」

ちょっとまって そんなんじゃないから。

例えばゲームに出てくるキャラクターが現実に現れたらさ。

個性のあるお姫様よりも村娘のほうが

目鼻立ちが整っていて美人なんじゃないかな?って思っただけだって。


「なあセレネ」

「な~によ」

「俺がニーマン使いだって言ったらどうする?」


「あなたがニーマン使いなら 最強じゃない?仲良くしたいわ。

ニーマン使いはね。 魔女の魔法のモデル。魔女の始祖と呼ばれているの。

でも魔女とは違って魔法を超えた力を操っていたと言われているわ。

伝説のニーマン使いの性別までは伝わっていないけど

でもね オーレンス、大切なことがあるの!だってね。魔女って女よ

オーレンスはどう見ても男の子でしょ?クスクス

男なら「オレは賢者だ!」って言わなくちゃ恥ずかしいわよ。さあ 行きましょう」


「魔女は女だからニーマン使いも女だと思われているでチュね」

「異世界の常識ゲロな。シクシク」

・・・・・

オーレンスは 異国の顔立ちで個性的だし性格も個性的だわ。

でも、村に付いたら、きっとジェフラのお気に入りになっちゃうんだろうな・・。

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