第8話 クカコスの村の宴

「村が見えてきたでチュね」とサブロウは言うけど村が見えたというより壁と

壁の向こうに屋根が見えるな。



「はぁ はぁ、ようこそ クカコスの村へ、はぁはぁ いい運動になったわ」

ようやく村娘らしいセリフを聞けたな。

でも実は運動を兼ねていたのか?

魔法を破られてグッタリしていたときより辛そうじゃないか?

「はぁはぁ やっと着いたか~クカコスの村だぁ・・ バタン」

そして俺はもう動けない。


村は石や木の柱の壁がぐるりと囲まれている。

石にはコケやツルが生えて 古代遺跡に見えなくもない。

小人に侵入されないために、壁を作らないと村が作れないというわけか

一体何年あればこんな壁を作ることが出来るんだろう?


「セレネ! 戻ってきたか!」

門番のガネルが俺たちを見つけて門を開けて駆け寄ってきた。

二人は話をすると ガネルが小さな荷物を二つ抱えてセレネと一緒に

村にある診療所に運ばれたヨーゼンのところへ向かってい行った。



村娘にもう少し案内をしてほしかったと思う気持ちになるのは異世界に来ても同じようだ。

村に入るとイギリスの田舎町に似ている、

石造りの道があって確りしている部分があるかと思えば田舎らしい景色もあるな。


そして まず最初に目に入ったのは 村の中心にある像だ。

近寄って見ると ジャンバルの像と書かれている。

村の守り神様か。


ひょうきんなお面を被っていて「お祭り用」の神様って感じだな。

それにしても村人の服装は中世ヨーロッパぐらいなのに 

村は田舎に古代遺跡をミックスしたような個性的な感じのある石造りの村だな。


少し進むと村のお金持ちがすんでいそうな邸宅が見えてきて

「あれはセレネか?」とセレネ達と上品な服を着た親子とが話をしている。

なんだろう?でも 言い争いをしているようだ。


「あら! セレネ、今回はお漏らしはしなかったみたいね。けど 無事で帰ってきてくれて。。よかったわ」

「なによ、ジェフラ! あなたの口も相変わらず悪いわね。でも奇病にかかっていなくて。。よかったわ」

二人は抱き合うのかと思ったけど 拳と拳をガツンとぶつけ合ってこれから

格闘技の試合でも始まりそうな雰囲気だった。


「この二人 仲がいいのか悪いのかわからないでチュね」

「ライバル ガハハハ」


なあ サブロウ、それにしてもこの異世界は美人が多いのかな?

ここは都でもなければただの田舎の村のはずなのに

ジェフラとかいう娘の可愛さは何だ?

「オーレンス、ハムスターでもわかるように説明してほしいでチュ」

そうか。まずは クリクリとしたキュートな目。

それに栗色の巻き毛だけに飽き足らず、

それをチャームポイントの可愛いリボンでまとめ上げてる。まずまず 可愛い。

口下手の俺でもさ

「ジェフラさんに「私は栗の妖精よ」って言われたら騙されちゃいますよ。へへへ」

くらい言えそうだわ。

「栗でチュか?目が釘付けになっちゃいそうでチュね」

そうなんだ、ついつい見とれてしまう何かがあった。

そして肺が小動物みたいに小刻みに息をしようとしている事に気が付いて

もしかして俺・・興奮してたのか?と気づかされた。


セレネが俺を見つけて呼んでくれた。

どうやら紹介してくれるようだ。

「こちらがオーレンス。道中で助けで頂きました」

「オーレンスです。よろしく」


「私はクカコスの村の村長、そしてこの子は私の娘だ。

オーレンス殿のおかげでヨーゼンやセレネが無事戻ることが出来ました。感謝しますぞ」

「私はジェフラよ。ねえねえ 草原を一人で抜けてきたの??

あなたってすごいじゃない。

村の羊飼いとそこの村娘を助けてくれてありがとう。

滞在している間は、私のところに来て旅の話聞かせてほしいな 」


目がデカくて、それに比例してまつげも長い。

ヒロインだなこれ?ヒロインだろ?


「何言ってるでチュかオーレンス。オーレンスは外国人を見たことがないでチュか?」

そうなのか??でも ちなみに サブロウも外国人見たことないだろ。

「えっへん ボクはニュージーランド出身でチュ」そうだ。

そうだったわ、ペットショップのゲージに書いてあったわ。

サブロウは実は外国人だった。


「どうされました?オーレンス殿?・・・あなたは大切なお客人です。

数日間はゆっくりしていってください。」

村長からは物資を運ぶのを手伝ってくれたおかげで病気の人たちが助かったと大変、

感謝されて宴に参加してもてなしを受けてほしいと言われた。


「あの これは道中で偶然拾ったのですが村のために使ってください。ドサ!!」

「こんなに いいのかね??」


俺はコガネムシで集めたお宝を半分、村長に渡した。

村長の娘ジェフラは「へぇ~ 見た目と違って あなた。やるわね」

と猫が獲物を見つけたような目つきになった。

この子ってプレゼントとかで意外と簡単に落とせそうだな。。。

そんなことを考えると

うっ ホホの付け根が痛い・・ヨダレこそ垂れていないけどこれはまずい。

今はあまりこの子のことは考えないほうがよさそうだ。

顔がデレデレになってしまう。


「太っ腹 ゲロ ゲロロロロ 」

コガネムシの反応も結構あったから

これからもしばらくは村に泊まって探索をさせてもらおうと思っているんだ。

泊めてくれるって言ってたし前金みたいなものだよ。


ジェフラに「じゃぁバイバイ」と言われて村長に

「ヨハン! ヨハ~ン。すまぬがオーレンスさんを案内してやってくれ」

と村長のお付きのヨハンさんにに案内されて長屋の部屋に通された。

「オーレンスさん、私はヨハンと申します。

村長様の邸宅で身の回りのことをお世話する仕事をしています。

さて、ここがあなたのお部屋ですよ。

沢山のご寄付をされたようですが村にはしばらく滞在されるのですか?」


「ご迷惑でなければ数日は滞在したいところですが この近くに村や町はないのですか?」


「ああ セレネ達が帰ってきた町がここから徒歩で3日のところにありますよ。

でも時々、小人が出る場所がありますのでパーティーを組まないとまず移動は無理ですね。

ですがオーレンスさんはクカコスの村の近くまで一人で来られるぐらいの凄腕の方でしたね。

失礼しました。」


俺の泊まる部屋は シンプルイズベストな白い壁にベッドが一つだけ置かれている部屋だった。

クローゼットとベッドはあるけどイスも何もない。

「殺風景でチュね」

「ドームに木材、入れてくれたラ。オレ 何か作ってヤル 」

「一人になりたいときにちょうどいいゲロ シクシク」



「夕方にはセレネたちの帰還を祝って

村の中央のジャンバル様の石像の前で宴が開かれますので、

それまで おくつろぎください。

ところでですがオーレンスさんの顔立ちは異国の方ですよね?

実は遠くの国から旅をされている有名な方がこの村にいらっしゃるのですよ。

小人を倒せる戦士を育てるために旅をされている英雄の


賢者スデーモ様。

そして 弟子の戦士マクア様です。


本来はお立ち寄りになられた次の日にも旅立たれる予定だったのですが 

村に謎の奇病が流行り出しまして出発をせずに村にとどまって頂いているのです。

とても親切な方々で今日は 村長の邸宅のほうで賢者さまが村人に、

村人に眠るスキルをサーチしてくださっているのですよ。

セレネ親子のように魔法の片りんがあるならいいのですが

村人の暮らしにそれほど関係ありませんし、お金もかかりますから誰も調べないのです。

ですが誰だって憧れはありますよね。 

私もこれから大賢者の道に進むべく、賢者様の元へ行ってこようと思っているのです!!!

弟子にならないか?なんて誘われたらどうしよぉ~!!


そして子供っぽいお弁当作りからも解放される予定です。

おっと 私としたことが取り乱しました。

何かありましたら気兼ねなくお声をかけてください。失礼します」


行ってしまった。俺はひとまずベッドにダイビングしてみた。

羊の柔らかさのベッドで数を数えていたらすぐに眠れそうな寝心地だ。


「オーレンスは 調べてもらいに行かないゲロか?」

俺にはニーマンの能力があるから賢者スデーモにサーチさせるわけには行かないけど、

俺にも魔法や剣のスキルが眠っているかもしれないな。

「魔法剣!! スパー!スパ!」なーんて やってみたいとベットの上で素振りをしてみた。

でも「オーレンスは 魔法剣好きでちゅね。昔から・・」

サブロウの俺の子供の頃の話が始まった。

「・・・でしゅよ、それで目を閉じたまま振り下ろしたオーレンスは照明を落として壊しちゃったでしゅ」

「ガハハハッ」

「シクシク 怒られちゃったゲロか・・」


それは昔の話だから!辞めてください神様、サブロウ様!

ああ 恥ずかしい(*ノωノ)


夕方になって セレネたちの帰還を祝って宴が開かれた。

賢者様と剣士様は邸宅で食事をするそうで来ていないようだけど

賢者と魔女は 魔法の思想が合わないからあまり、

会わないとかなんとか言ってたな。よくわからないけど。


それでも 陽気な顔のジャンバルの像の前にはご馳走が並ぶご馳走は丁寧でこまやかに

作られていて魅了される。

そして ジャンバルの像の前に組まれたキャンプファイヤーのような焚き木に

小人の残骸が放り込まれて火が付けられると 焚火は一気に燃え上がり宴がスタートした。


「ジャンバルぅ~♪ ジャンバル、ジャンバルぅ~♪ ほい↑ほい↑」

こりゃーいい! 食べ物もおいしいし 踊りも楽しいぞ!

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