第2話 村娘セレネの楽しい贈り物

空から村も見えて方角もバッチリ覚えたので何とかなるだろう。

それにしても ここは草原か? 

葉の広いシダなんかが生えていて視界が少し悪い。

しゃがめば逆に茎しかなくて見通しがいいな、

しゃがんで歩きたいところだけど それはしんどそうだ。

まあ モンスターが襲い掛かってきたら逆に身を隠したりして進めそうだけど

今はシダをかき分けて進むしかないな。

よし!と声を出して立ち上がると

あれ? 何だこれは?


服装を見てみると 地球の服がなくなっていて代わりにこの世界の服だろうか?

冒険者風の民族衣装が着せられていた。

胸元には 金運が上がりそうなコガネムシのブローチがつけられていて、

駄菓子屋で死神のおばあさんから宝くじを落としたコガネムシの形だった。

そして ポケットは・・・ ゴソゴソ・・・ あ。財布がなくなっている。

代わりにポケットの中には銀貨が5枚入っていた。

そうか、、あちらの世界のものは持ち込めないわけだな。

こんなところに突っ立っているわけにも行かないし見晴らしのいい場所まで歩いてみることにした。


「ゲロゲロゲロ・・」

カエルの声が聞こえる。

砂っぽい土に石が所々 ゴロゴロとしている。

シダやらカヤやらをかき分けながら進んでいたけど

うっとうしいと言うか、自然の驚異を感じるくらい茂っていた。


よし!試してみるか「うりゃ!! おぉーー!! 魔力剣! ニーマンソード!!がははは」

なーんて 無理か。

茂みには全く変化はないし魔力らしいものも感じない。

魔法ってどうやって使うんだろう?

それより、そろそろ道が恋しくなってきたぞ。

人工物はないのか?

まずは村よりも先に道を探さなきゃいけないな、


「どうしたの?」

「・・そんなことないですよ」

「ウサギに乗ってもよかったんだぜ」

「これは・・・」

「気づかれてるわ・・袋へ・・」


なんだろう?人の声が聞こえる。

言葉の意味も分かるようだ。ちょっくら行ってみるか?

茂みをかき分け進んでいくと声がどんどん大きくなってきた。

この人たちも きっと 村まで行くはずだ村まで同行させてもらう事にしよう。


「バサ!!」


大きなシダをかき分けると6人組の姿があった。

一番最初に目に入ったのが 鉄の塊のような大きな大剣を持った大男。

戦士系だろうか?身軽そうなシンプルな服装に巨大な金属をもっている。

剣一本で何でも解決してきたって感じがする男だな。


そのほかの人たちは村人だ。

俺と同じような服装で特に目立ったところもないし温厚そうな村人たちだ。

あえて言うなら女性が一人いる。

異世界の女性だ。 村人の布の服を少しわがままに着こなしていて首にはゴーグルをかけている。

髪の色は金髪のロングの村娘だ。

けど、俺のタイプかどうかというと・・選べない。

だって・・村娘だけに目鼻立ちが整い過ぎてて感情移入が出来ない。

異世界人に会えてテンションが上がっちゃったみたいだけど

でも 真ん中の大男を除けば 安全そうだしまずは村まで行けそうだ。


村娘が前に出てきたぞ。ちょっと見すぎちゃったかな。

「こんにちは 俺はオーレンスといいます。」

村人が着ていそうな布の服を装備したわがままボディーの村娘は 旅人用の笑顔に顔を切り替えると 

「こんにちは私はクカコスの村娘セレネです。ようこそクカコスの村へ 村はあちらです」

といって首を傾げた。

普通なら可愛い仕草だけど整い過ぎた目鼻立ちは気が強そうな女性にしか見えない。

しかも、あちらといって指をさしているけど、あちらの村はまだ数キロ先ですよ。

アバウトな村案内ありがとう。


なんか 村娘がさっきからチラチラと目線を送ってくる。

俺は口下手なんだけど 気まずくなる前にここは勇気を出さなきゃいけないな。

「実は 村に向かっている途中だったのですが、一人旅なもので、、

みなさんも村まで向かわれるのでしたら、村までご一緒させてもらえませんか?」

どうだぁ? 旅は道連れっていうだろぉぉぉぉ

口下手だけど頑張って喋ってみた。


だけど 機械のように右の首を左に傾けると村娘セレネは 村を指し示していた指をこちらに向けて

「あなた、戦えるのかしら?もしかして魔法使い?違うなら村はあっちよ」

と確信に迫るようなことを言ってきた。旅は道連れではなかった。


俺の体をチラチラ見てくると思ったから

俺もその気になってそのノーブラっぽい布の服から谷間をチラチラ見返してやってたけど

私たちと同行できるくらい強いのか?っということか。

仕方がないからポケットに入っている銀貨でなんとかするか?・・どうする。


「私はスニークといいます。実は・・」

え!ちょっとまて お前はさっきまで大剣の男と一緒にいただろう?

村人だから気配がないとか?そう言う事は止めてくれよ。

スニークは俺の真横にいてささやき声風の地声で話しかけてきた。

「実は・・村娘セレネは村娘なのですが母親は元魔女なのです。だからウソは突かないほうがいい」

魔女だって?

村娘の整い過ぎた顔立ちが幽霊のように冷酷に見えて

大きな胸も、くびれた腰も、大きなお尻も、なんの魅力も感じなくなった。

本当に怖いものほど美しかったりする。

それにしても大荷物だ。大事な物資を運んでいる最中なのか?

まさか あの袋の中に人なんて入ってないよな?

でも あれ?

あの袋とあの袋。。なんか人の形に見えるような・・いいや・・いいや

まさか ないない!

イスだ!座椅子が入っているんだ。西洋風座椅子か~!

俺が3人目の生贄なんて。。ブルブルブル・・ないない。

そうだ!村の名前だけでも聞けたからいいとするか。

ああ よかったな~村の名前が分かったぞ


「俺は魔法使いじゃないです。クカコスの村って名前なんですね

一足先に村へ行ってます。

皆さんもお気を付けて・・・それでは!」


俺がそう言うと村娘セレネは 無表情に顔を下に向けた。

「そう、残念だわ。ふふふ 村はあっちよ・・」

なんでだ。むしろ予定道理かよ。


「ズドドォォォォォォン!!! オーレンスと言ったな。

この辺りには小人が出るから気を付けろ」


鼓膜がいたくなった。

大剣が地面に打ち落とされて地響きが地面を揺らした。

あれ 道路工事とかで重機のお兄さんが手元を狂わせたときに出る音と同じだからね。

あんな鉄の塊を人が持てるとかすでにおかしい世界だ。


「オーレンスさん、ひどいなんて・・・


まただ スニークは 

また今度は反対側の耳元に

話しかけてきた。


・・思わないでくださいね?

村に着いたら門を開けてもらえるように門番のガネルには話しておきますから」


誰だよガネルって! もうダメだ。 ここにいるのは限界。

逃げなきゃ! 逃げなきゃ! うぉぉぉぉ!!!!!

追ってはこないようだけど 振り返ったら 

大剣とか呪文攻撃とかが飛んできそうな迫力を背中に感じて振り返れなかった。


ちくしょ・・・。 村人だと思って油断しすぎた。


なんて思っていたら後ろから俺を呼び止める声が聞こえる!

でも 俺を呼び止める声はなんて優しい声色なんだろう。

「ま~って! 待っててばぁ~ オーレンスさん!!」

後ろを振り返ると そこにいたのは村娘のセレネだ。

もしかして心配してきてくれたのか?俺の勘違いだったのか?


やあ!セレネさんじゃないですか?

相変わらずの目鼻立ちだけど さっきのような冷酷さが感じられない。しかも

あれあれあれ?

しかも 手には包み紙を持っているぞ・・この展開は


「はい これ!体を動かすときに使ってみて。

一回しか使えないけど、いつもより楽しくなるはずよ」

そう言って包みを俺に渡してきたときにセレネの手の裏側が俺の手のひらに触れた。

ああ これが人のぬくもりってヤツだ。 ありがとう。

よく考えれば 力差のあるのにパーティーに入れてくれなんて言われたんだよな。

だけど心配してプレゼントまでくれるなんていい人だよな。


村娘セレネさんは 細いけど力強い腕を振りながら仲間のところへ戻っていった。


・・・・・

「セレネ 病人がいたとは言え、やり過ぎだぞ」

「そうです。村でまた会うんですよ。どうするんですか?」


「そうだったわね。じゃぁ 村でココルカを一杯ご馳走するわ。それで許してくれるはずよ

それに プレゼントも渡しておいたわ。

それより異国の顔って素敵よね。ぜーんぶが個性的だったわ」


「もしかして村人のために用意していた、あのプレゼントですかぁ?。ほどほどにしたほうがいいですよ」


「ところで このツボはなんだ?」

「さあな 知らないうちに荷物に紛れていた。ツボの蓋には「開けてください」って書いてあるぞ

開けてみるか?

なーんだ 空のツボじゃないか。。手の込んだイタズラのわりにしょぼいな」

・・・・・

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