第82話:守護石軍団・オードリー視点

 眼の前にグレアムとそっくりの騎士達が整列しています。

 その数二万を超える大軍団です。

 しかも全員守護石が人の形をとっているのです。


「どうですか、これだけの影武者がいれば、グレアムが狙われる可能性がとても低くなりますよ」


 アラステアが自慢するように言います。

 どんどん人間味が出てきてとても面白いです。

 

「魔界から神々の国に攻め込むのよね。

 そこに他の世界の神々が一緒にいたりしないわよね」


 これが一番心配な事です。

 大魔王がやってきて一緒に神々の国に攻め込むことになったのですが、そこに魔界の神々だけが住むのならいいのですが、他の世界の神々まで一緒に住んでいたら敵を増やしてしまう事になります。


「それは大丈夫だと思われます。

 もし他の世界の神々が一緒に住んでいたら、人族に手出ししなかったでしょう。

 その後も他の世界の神々が不介入という事はありえません」


 確かにアラステアの言う通りですね。

 神々は自分が支配する世界の近くに住んでいるのでしょう。

 

「では予定通り明日には攻撃を開始するのよね。

 本当に私達は魔界の神々に勝てるかしら」


「別に今回の戦いで勝てなくてもかまいません。

 今回の遠征に参加するのは守護石を核にした使い魔達だけです。

 家族どころか人族は誰一人参戦しません。

 今回の戦いの目的は魔族の神々が住む場所を確かめる事が一番です。

 ついでに魔族の神々の強さを知る事ができれば十分です」


「でも、大魔王と王妃は参戦するのでしょう。

 二人は大丈夫かしら」


「正直に言えば、大魔王や王妃の事などどうでもいいのですが、オードリーが心配しているようなのでお答えしましょう。

 まず間違いなく大丈夫でしょう」


「その理由を教えてくれるかしら」


「大魔王は王妃を溺愛しています。

 少しでも王妃が傷つく可能性があるのなら、絶対に攻撃はしません。

 徹底的に護りを固めています。

 その大魔王が攻撃に踏み切るのですから、よほど自信があるのでしょう」


 多分アラステアの言う通りなのでしょう。

 あれだけ形振り構わず王妃を蘇らせた大魔王です。

 もう一度王妃を失うような危険を冒すとは私も思いません。

 ですが相手は魔族を支配管理してきた神々です。

 なにかとてつもない罠を仕掛けて待っている可能性はないのでしょうか。


「オードリーの心配は言葉にしなくても伝わってきます。

 だから正直に申し上げますが、大丈夫です。

 今回我々が大魔王に提供した魔力は莫大な量です。

 送り出す援軍も一体一体が魔王に匹敵する強さです。

 これで負けることはないと断言できます」


 アラステアがこう言い切っているなら大丈夫なのでしょう。

 でも、どうしても嫌な予感がなくなりません。

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