第51話:ルーパスと大魔王1
「まずは元人間のモンスターを連れて来たぞ、これで一つ目の条件は達成した」
ルーパスは二十日かけて大陸中を駆け回り、元人間でモンスターと化したモノ達を探し回り、その全てを開いた通路の前に集めた。
いちいちその場で新しい通路を開いて魔界に送るよりは、開け終えた通路の所に集団強制転移させる方が消費する魔力量が少なく済むからだ。
大魔王と交渉してミネルバを蘇らせるためには、それなりの魔力を維持し続けなければいけないとルーパスは考えていた。
「ふむ、よかろう、数は大きく減っているが、個体力は大きく増している。
これならば十分生贄にすることができる。
ではもう一つの条件、オードリーの守護石に蓄えられた魔力を渡せ。
新しく創った魔晶石、いや魔宝石と呼ぶべきだな。
魔宝石を渡すのだ、ルーパス」
大魔王は身を乗り出さんばかりにルーパスに迫った。
「まだだ、今はまだ渡せない。
大魔王の事だから全て見ていたのだろう。
全て知っていてそんな演技をしているのだろう。
馬鹿な事をしていないで、大魔王には自分のすべきことをやってもらおうか。
ミネルバを蘇らせるための魔法陣は完成しているのだろうな」
「ふっふっふっふっ、流石はルーパスだ。
我の性格をよく理解しているし、我と戦う事になった時の備えもしている。
まあ、余の力なら魔法陣など使わなくてもミネルバを蘇らえるのは簡単だ。
だが魔法陣を描いた方が魔力の節約になるのも確かだ。
では見せてやろう、あれがミネルバを蘇らせるための魔法陣だ」
大魔王はミネルバを蘇らせるための魔法陣を覆っていた隠蔽魔術を解除した。
だがルーパスに覚えられないように八割の術式は隠したままだ。
魔法陣の上には勇者と遠征軍の連中が埋め込まれている。
大魔王が言っていたミネルバを蘇らせるために使う生贄なのは明らかだった。
だがルーパスには何の感慨もなかった。
怒りも哀しみも憤りもなく、むしろ恨み辛みが晴れる思いだった。
「大魔王に約束を守る気があるのは分かった。
だったらこちらも約束を守る気がある証拠を示そう。
これは俺が新たに創った魔宝石だ。
魔力はまだ込められていないが、大魔王にくれてやる。
これがあれば大魔王の魔力が無駄になる事がない。
神々と戦うと言っていたな。
だったらこれが切り札になるんじゃないのか」
「くつくっくっくっ、ルーパスにしては察しが悪いな。
オードリーの事が気になり過ぎて頭が回らないないか。
ルーパスがそれを創り出したのを見て我が再現しなかったとでも思っているのか。
ルーパスがオードリーのために魔宝石、いや、守護石を創り出した時に、同じ物を創り出して既に身に付けているわ。
ほれ、見てみろルーパス、嘘ではあるまい」
大魔王はルーパスが初めて創作した魔法袋の能力を内蔵した魔宝石、守護石と全く同じものをルーパスに見せつけた。
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