第50話:ルーパス奔走

 ルーパスはオードリーが側で眠っているのを感じながらセラミック小屋を創り出している間に、徐々に冷静に考えられるようになっていた。

 特にずっとオードリーを護り続けてくれていた、守護石が何を考えてオードリーを眠り続けさせ、グレアムを側に置いているのかも考えた。

 推測でしかないが、ルーパスなりの答えを見つけて、オードリーとミネルバにどう接したらいいのか覚悟を決め直した。


「後は頼んだぞ、フリデリカ、グレアム達」


「「はい」」

「「「「「ヒッヒッヒィイイイン」」」」」


 ルーパスは声をかけてセラミック小屋を離れた。

 一番信頼している守護石には声をかけず、二番目に信用している馬達は達としか表現していないが、その心は軍馬と輓馬にも伝わっていた。

 軍馬には魅了の魔術は使っていないが、輓馬達には魅了の魔術を使って絶対に裏切らないようにしてある。

 輓馬達を信用していない訳ではないが、馬はとても臆病な生き物なのだ。

 無意識に逃げてしまう生存本能を百戦錬磨の軍馬達と比べるのは可哀想なのだ。


 ルーパスは少し焦りながら獲物を探した。

 オードリーとの時間を愉しみ過ぎたと反省していた。

 愛するミネルバを蘇らせることができるのは大魔王しかいないのだ。

 大魔王との約束をおろそかにする事は絶対にできないのだ。

 ルーパスは急いで生贄にする人間達を探した。

 まずはオードリーを虐め苦しめた腐れ外道達。

 次にオードリーが虐められているのを見て見ぬふりしていた卑怯者達。


「これは、少々困ったな。

 これでは数が圧倒的に少ないな。

 仕方がない、オードリーとミネルバに忌み嫌われようと、これはやらねばならん」


 ルーパスはオードリーを虐め苦しめた、イルフランド王家の者達とフィアル公爵家の者達、更に両家に加担していた者達、見て見ぬふりをしていた者達を見つけた。

 いや、そんな連中の成れの果てを見つけた。

 心の卑しさ汚さに相応しいモンスターに変化したモノ達を見つけた。

 だが互いに傷つけ合い喰らい合った事で大きく数を減らしていた。

 数が減り過ぎていて、一国の王侯貴族だけでは必要な数をそろえられなかった。


 とりあえずイルフランド王国の元王侯貴族を確保隔離したルーパスは、急いで周辺国の王都を訪れ王城内や貴族街にいる元王侯貴族を集めて隔離した。

 ルーパスが訪れた全ての国で、ほとんどの貴族がモンスター化していた。

 全て守護石がやった事だとルーパスは察していた。

 オードリーを護り復讐するためにやってくれたことだと察していた。

 そんな守護石が理由もなくオードリーを眠り続けさせるわけがない。

 ルーパスはオードリーが目覚められる条件を整えないといけないと思っていた。

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