第49話:ルーパス乱心
「まずはオードリーの為の部屋だ」
ルーパスは誰に聞かせる訳でもないのに、これからやる事を口にしていた。
大魔王との約束を後回しにする事への自分への言い訳だったのか。
それともグレアムやフリデリカに自分の力を見せつけたかったのか、ルーパス自身にも分からない事だった。
ルーパスの言葉と共に魔力が奔流となって森の中に駆け巡った。
最初に木々や草花、苔や茸、虫や小動物が容赦なく薙ぎ払われた。
腐葉土やその下にある土や岩石が集められ、分子や原子の状態にまで戻された。
その上で新たな結合をさせられ、高熱を加えられてセラミックスにされた。
衝撃強度、破壊靭性、熱強度、柔軟性などの特徴を持った八種が創り出された。
「みよ、我が英知と魔力の粋を集めてる創り出した破壊不能の壁を」
ルーパスはやり過ぎの行動を、自分でも恥ずかしくなる言葉で押し隠した。
熱魔術、氷魔術、衝撃魔術など、あらゆる魔術に抵抗できる八種の壁を創り出して、八種各三層の合計二四層の壁に守られたオードリーの部屋を創り出した。
「ふむ、オードリーの部屋だけでなく、調理場に浴室とトイレといった水回りに、フリデリカとグレアムの部屋も必要だな。
心配するな、お前達の厩も個室を用意してやる」
ルーパスは最初にオードリーの部屋を創った後で、唯一の扉の先に控えの部屋を創り出したのだが、ここはオードリーが私的な客を迎える応接室でもある。
そしてオードリーが呼べば直ぐに駆けつけられるように、オードリーの寝室から控えの間を見て左側にフリデリカの寝室を創った。
反対の右側には調理室と浴室とトイレを創った。
グレアムの寝室をオードリーの寝室から離したいルーパスは、控室の更に先にグレアムやフレデリカが普段食事をする部屋を創った。
オードリーの寝室、控室、食堂が中心に並ぶ形だ。
グレアムの寝室はオードリーの寝室から見て食堂の右側になる。
オードリー用の調理室と家臣用の調理室を分けるために、食堂を挟んでグレアムの寝室の反対側にも調理室を創った。
食堂の先に玄関ロビーとも言うべき広い部屋を創った。
その左右には馬車を入れておく部屋や厩が創られた。
ルーパスが俯瞰して確認してみると、オードリーの寝室だけは飛び出している。
これでは外から攻撃される時に真っ先に狙われそうだった。
「ふむ、オードリーを護るためにダミーの部屋を創るか」
誰に聞かせる訳でもないのに、自分の失敗を誤魔化すためなのか、独り言をつぶやいては野営の為だけのセラミック小屋をどんどん巨大化させていく。
オードリーの寝室の左右と先にどこからも入れない閉鎖部屋を創り出す。
オードリーの寝室の先にある閉鎖部屋の左右にもダミーの閉鎖部屋を創り出す。
今度は上空からの攻撃が気になって二階を創り出す。
二階が完成したら地下からの攻撃が気になって地下室を創り出す。
巨大化していく小屋を見てグレアムやフレデリカが呆然としていた。
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