第52話:ルーパスと大魔王2

「何故こんな茶番をやっている、大魔王。

 俺を弄って愉しんでいいるのか。

 自分で守護石が創り出せるのなら、俺など必要あるまい。

 いや、俺どころかオードリーの魔力も不要だろ。

 いったい何がしたいんだ、大魔王」


「察しが悪いな、ルーパス。

 ミネルバを死なせてしまい、オードリーをも苦しめてしまった事で、心を病んで察しが悪くなったのか。

 よく考えてみろルーパス。

 何故我がルーパスを使おうとしているのかを。

 何故オードリーの魔力を手に入れようとしているのかを」


「そんな事くらい分かっている。

 俺とオードリーの魔力を利用しようと思っているからだろ。

 だがその魔力なら……」


「察したようだな、ルーパス」


「いくら無尽蔵に魔力が貯められても、魔力発生装置は多い方がいい。

 大魔王が敵対しているのは神々だ。

 有利な防衛戦とはいえ、神々に波状攻撃されては不利だ。

 まして今は魔王の一人と多くの魔族を失っている。

 俺とオードリーにその代わりをさせようという事だな」


「もっとよく考えろ、それだけではないぞ」


「他にも理由があるというのか。

 いったいなんだ、単純に俺とオードリーを魔力の発生装置として考えるのなら、他に大きな理由など……

 いや、魔族と人族の違いか、それとも魔界と人界の違いか。

 魔界と人界のの違いといえば、時の流れの違いか!

 いや、担当している神々の違いなのか?」


「いいぞ、いいぞ、いいぞ。

 その違いを理解して、我がルーパスとオードリーに望んでいる事を察したら、我に魔力を渡す事の不安もなくなるだろう」

 

「魔界と人界を担当している神々は別なのだな?」


「そうだ、そして今回は偶然だが神々の仲が悪いのだよ」


「俺とオードリーを安全な後方の魔力装置にする心算なんだな。

 もし魔界を担当している神々に俺とオードリーの存在がバレたとしても、魔界担当の神々は、人界担当の神々との戦いを覚悟しなければ、俺とオードリーには手出しできないというのだな」


「くつくっくっくっ、ようやく分かったか。

 そういう事だ。

 だから安心してオードリーの魔力を我に渡すんだ」


「信じられないな。

 全ては大魔王が口にしているだけで、俺が確かめた訳じゃない。

 ちゃんと俺自身で確認するまでは鵜呑みにできない」


「くつくっくっくっ、分かっている。

 ルーパスも猜疑心が強くなっているからな。

 ルーパス自身で調べるがいい。

 だがそれは人界に戻ってからにしろよ。

 また魔界に長居すると今度はオードリーが中年になってしまうぞ」


「あ!

 まさか、今も人界では早く時が流れているのか?!」

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