③
俺が1歳の誕生日から5年が過ぎ、6歳の誕生日を迎えた。この5年間俺は技術と肉体のトレーニング、そして情報を集めていた。今は俺が死んでから約300年後の世界、文明が発達しておりその分争いが多くなっている様だ。俺の生まれた国、ウィルストローム王国も例外ではない。
そして次に、住んでいる場所はウェスパール家が統治している領地だ。国の規模拡大のために貴族を分散させているのだろう。半年に1回は報告として中央へ向かわなければならないがな。
ウェスパール家の隣にはスルーズ領があり、そこの領主と父カラムは学生時代の同期ということもあり仲がいい。スルーズ家には娘がおり、月に数回遊びに来る。名前はルカ=スルーズ。今となっては幼馴染的存在だ。おとなしい子だが、見た目は素晴らしい。
俺がここ数年でもっとも苦労したことは子供の振りをすることだ。なんせ中身はおっさんだからな。読書やトレーニングをしている時に気配を察知したらすぐ寝るようにしていたため、身長が普通より大きい。寝る子は育つというものだ。しかし、この家にはまだ秘密がある。なにか不思議な気配がするのだ。それは後々調べるか。
考え事をしていると、後ろから父上に声をかけられた。
「セロム、私の後ろについてきなさい。」
今までこのようなことはなかったことから俺は不思議に思った。
「父上、俺はこれからどこへ?」
父はただ一言、
「ついてくれば分かる。」
とだけ言った。
少し歩くと地下に繋がる隠し階段が現れた。階段を降りると異様な不気味さが感じられた。
「あの、父上ここは・・・」
俺が声を上げようとした瞬間強烈な殺気が俺を襲った。すぐに反応した俺は後ろに下がり警戒態勢をとった。
「ほう、殺気に気付き警戒までするとは。中々のもんだ。」
よくみると父の横には兄のアルンもいた。
兄上は俺をみて
「セロム、お前は今日から暗殺者になるための特訓を行うことになる。父上の教えを受け成長するのだ。」
と言った。
俺はまた暗殺者として生きねばならんのか。しかし、面白そうだな。前世は師匠こそいたもこの。練習は森の中だった。今のこの設備で俺はまた強くなれるんじゃないかとわくわく感があった。そんなことを考えていると
「いいかセロム。私たちは国の暗殺者だ。ウェスパール家は代々暗殺者だったしな。」
なるほど、前の違和感はこれか。どうりで聞いた事があると思った。
1つスッキリしたところで、父上の言葉を聞いた。
「私たちは国のために暗殺を行い、国を守るのだ。そのために6歳を迎えたら訓練を行うことにしている。」
しかし面倒だな。史上最強と言われたこのジン=クロックスが殺された国のためにまた働くとは。次はあんなヘマをしないように鍛えなきゃな。
あれこれ考えていると父上からの殺気が強まった。「この状況下に考えごととは余裕だな。俺の勘違いだったか?さっきのは。」
そう言われ少しイラッときた俺は父上をら上回る殺気をぶつけた。
「・・・ぐっ!」
父上と兄上はひるんでいる。
「セロム、今のは・・・」
あ、なんて説明しよう、普通ならおかしいよな俺
とりあえず、ごまかそう!
「え?なんのことですか?」
それを聞いた父上と兄上はさらに驚いていた
「父上、セロムのやつ無自覚で今のを?」
「あぁ、そうみたいだな。こいつは天才かもしれんな。」
ふっ、なにをいうか。俺は天才だ。
その後は色々説明を受けた。俺がこれからここでトレーニングする話。となりのスルーズ家も暗殺一家のこと。そして12歳になったら国立の学校へ行くこと。俺が行かなければならない学校とやらは表向きが貴族の学校。裏が暗殺者育成機関だそうだ。
他にも暗殺一家はあるんだな。どのくらいの力なのか楽しみだ。
「12歳ということは兄上は来年から行かれるのですか?」
「あぁ、そうだよセロム。わからないことがあったら僕に聞くんだよ。」
よし、情報源ができたな。後は、一緒に暗殺するパートナーがほしい。今の体ではできることが少ない。そうだ!ルカと一緒に訓練すればいいんじゃないか。
「父上!1つ。お願いがございます!」
父はそれを聞くと嬉しそうな顔をした。
「なにかな。話してみなさい。」
「俺の訓練をルカと一緒にやらせてくれませんか?」
驚いた父は少し考えると、
「それはなぜかね。」
と聞いた。
「今の俺は未熟です。一緒に戦えるライバルがいればさらに強くなれます。そして将来の仕事のパートナーとすることで効率があがり、連携もとりやすくなるからです!」
父はまた考えると、
「いいだろう。スルーズ家に掛け合おう。ただしだ、もしルカ=スルーズが裏切った場合はお前が始末しろ。それが絶対だ。」
ふん、俺がそんなことをさせるわけがない。
「わかりました。これからよろしくお願いします。」
そうして暗殺者としての訓練が始まった。
・ ・ ・
その夜、父カラムと母ミアは静かに話していた。
「今日のセロムちゃんの様子はどうだったかしら?驚いてましたか?」
「いいや、全くだよ。殺気をあててもすぐ警戒態勢にはいり、無自覚で殺気をぶつけてきたんだ。セロムは俺以上の天才だよ。国の暗殺の王と言われていたジン=クロックスに並ぶようになるかもしれん。」
「あなたがそこまで言うとはね、将来が楽しみね。」
「あぁ、ほんとだよ。」
この2人の話をドアの隙間から聞いていたアルンは心配そうな表情をして立ち去った。
K・A 〜King of Assassins〜 ましゅー @amanosito
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